ユーザー同士の交流から実際の来訪につなげる
横須賀市は仮想現実(VR)を活用した観光PR戦略を推進している。昨年10月に都市魅力の発信を目的とした「メタバースヨコスカプロジェクト」を開始。メタバースプラットフォーム「VRChat」で「ドブ板通り商店街」や「猿島」の雰囲気を再現したメタバースワールドを展開している。ワールドではアバター同士で交流できるほか、人気グルメの「海軍カレー」などを疑似体験可能。ユーザー同士のコミュニケーションを促進することが目的で、ワールド内での交流や撮影を楽しんだ後、SNSなどで拡散してもらうことで、現実のユーザーへのアピールにもつなげる考えだ。4月27日にはAIアバターの実証実験も開始する。
「メタバースヨコスカ」では、「VRChat」内でアバターを通じて交流できる「ワールド」と呼ばれる仮想空間で街並みの再現やアバターが見につける衣装など3Dデータの配布を行っている。「cluster」など、様々なメタバースプラットフォームが存在する中、クリエイターの熱意などが決め手になり「VRChat」を選択したという。ターゲットは「VRChat」のユーザーで、高校生や大学生など10~20代の利用が多く、横須賀市文化スポーツ観光部観光課の小山田絵里子主任は「思った以上に若い利用者が多い」と話した。
ワールド内の建物は実在の店舗をイメージしているものの、特定の店だとはわからないように再現している。特定の店舗だけを自治体がピックアップしないようにするためだ。一方、メタバースを楽しんだ顧客が現地に「聖地巡礼」で訪れた際に、雰囲気でどの店か想像してもらう楽しみ方もあるという。
ユーザー同士のコミュニケーション活性化が狙いで、観光地を知ってもらうことは主軸ではないという。観光地をそのまま再現してもPR効果は薄いとみており、ワールドそのものには予算をあまり割かない。ユーザーの交流につながる3Dデータの配布に力を入れており、「スカジャン」は4万以上ダウンロードされた。訪問者数は10月にスタートした「ドブ板通り商店街」のワールドで3万8287ユーザー、12月オープンの猿島ワールドでは1万8296ユーザーとなっている。ユーザーの交流や写真撮影を通じて「X」での露出につながっている。
3Dデータは自治体の資産として活用でき、今後はVRChat以外のソフトウェアでの配信も検討している。
4月27日にはAIアバター「えーあいそーだんいん」の試験運用を開始。AIアバターによる観光案内や雑談などを実施する。対話システムの開発には「うな技研」が協力。アバターのモデルにはVRChatで人気の「まめひなた」を採用した。試験運用期間は5月31日まで。VRChat内の「 Dobuita&Mikasa World」。小山田主任は「みんなに愛されるAIを作りたい」と意気込みを語った。
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