顧客(生徒)満足ナンバーワン!を目指して学校経営が始まった
1年間の副校長期間を経て、4月1日付けで茨城県下妻一高の学校長に就任させていただきました。花王から移籍し、不安に満ちていた昨年の4月に、この「アドタイ」コラムを始めさせていただいたことを思い出します。花王とは全く異なる教育業界に飛び込み、いよいよこの時期が来たなと、決意を新たに持った2024年の4月1日。私にとっては特別な日となりました。
1年間の副校長時代には、花王でのマーケティング経験を活かし、しっかりと3C分析を行っていました。特に自分の学校に関しては、SWOT分析のフレームワークを活用して、本校の強み・弱み・機会・脅威を把握しました。マーケティングの基本である、3C分析・SWOT分析を活用し、学校の経営戦略を立案する中で、特に気をつけたのは、「私の学校への入り方」でした。
民間企業出身の私が、この学校で何ができるのか? 教員のニーズ、保護者のニーズ、地域社会のニーズなどを分析・把握することに務めました。花王でも営業担当時代には、顧客満足ナンバーワンを目指す企業精神を叩き込まれたことが活きていると思います。
学校に関わるすべてのステークホルダーの方々の満足度を上げていき、最終的には、顧客(生徒)満足ナンバーワンの学校づくりをしていくことが、私の学校経営の柱になると思いました。
校長として、初めての仕事は「職員会議での教育方針の説明」です。いわゆる、所信表明と言えるものです。職員会議では、会議室の中央に大きなモニターを置き、両サイドには大画面液晶ディスプレイを設置して、プレゼンテーション形式で教育方針を説明させていただきました。デジタルを活用した、プレゼン形式が私のスタイルなので、このスタイルを取り入れました。民間マインドを学校に取り入れると、新鮮さや目新しさを感じていただけると思い実践してみたものです。
会議参加にあたり、今までタブレットを使わなかったベテラン教員の方たちも、タブレット端末を使って発表をしてくれました。デジタルの活用にチャレンジしている姿勢を見ていて、とても嬉しくなり、なんか感動してしまいました。
私はこの学校でDXの本質を伝えたいと思っています。デジタルを使うことは目的でないので、どのような新たな価値創造ができるのか。紙が減って、こんなに便利であるということを、教職員みんなで実践しながら、デジタル活用を推進していけたらと思っています。そのきっかけづくりができたのが、第1回職員会議でした。
目指すは「アントレ校長」、VUCAの時代に活躍できる生徒を育成したい
まず、私の教育方針をお話しました。具体的には以下の2点です。
1.時代の変化に対応した伝統校のアップデート(伝統校磨き上げ)、
2.グローバルで活躍できるアントレプレナーシップ精神を持った生徒の育成
ストーリーラインは、3C分析→SWOT分析、本年度学校経営計画、3ヵ年経営計画という流れです。伝統校のアップデートに関しては、早稲田大学ビジネススクールで学んだ、「両利きの経営―『二兎を追う』戦略が未来を切り拓く(Lead and Disrupt: How to Solve the Innovator’s Dilemma)」が役立ちました。日本企業の経営者の間で人気を集めている考え方ですが、創設100年を超える伝統校で起こりえる、イノベーションのジレンマを両利きの経営で乗り越えるのがよいと思い、本校版に戦略を落とし込みました。
「深化」と「探索」は、この変化の激しい時代の組織運営において、欠かすことのできない考え方「両利きの経営」を支える2つの柱です。今まで行ってきた既存のやり方と新しく始めることをバランスよく実現する深化と探索について、企業の事例を交えながらご説明しました。富士フイルム、トヨタ自動車、花王の両利きの経営事例を分かりやすく解説し、出来るだけ具体事例を取り入れました。これは実務経験がある、私の強みでもあります。むしろここに私の民間校長としての強みが発揮できると思っています。
無事に校長としての初仕事を終えた後、私の説明がビジネス用語で分かりにくかったか先生方にお聞きしたところ、「ここまでの方針説明を聞いたことがなかったので良かった」とお褒めのお言葉をいただいたり、「今年度やることが明確で、方針説明も分かりやすかった」と、先生方の反応は悪くなかった事は良かったかなと思います。まずは、今の学校に足りないものを付け加えたり、中高連携や企業や行政を繋ぐ、産学連携などから学校経営を始めてみようと考えています。
VUCA時代を生き抜くために必要な、誰にでも必要な起業家的精神(アントレプレナーシップ)。私自身も「アントレ校長」を目指して率先して挑戦し、頑張りたいと思います。
人を変えるためには、まずは自分の行動を変えることが重要だと思っています。
「デジタルマーケター、校長になる!」バックナンバー
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