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オウンドメディアの価値を拡張する「企業ストーリー」の届け方

「なぜ?」問いから始まる社内のストーリー収集法

Supported by PR TIMES STORY

企業姿勢や事業の裏側、奮闘する人の想いを発信し理解や共感を得る。企業成長に欠かせない発信を、多様なステークホルダーの記憶に残すには。

本連載では、企業ストーリーを発信することの効果について触れてきましたが、今回は、企業ストーリーの活用に挑戦したい方に向け、ストーリー発掘のポイントや、コンテンツの活用法についてお話ししたいと思います。

小さなストーリーから始める

書店のビジネス書の棚に行くと、経営者が創業から現在までの成功ストーリーや失敗からの回復を語るような名著があります。こうした偉大なストーリーを、広報部門だけでまとめ上げようとすれば、大変な苦労がかかります。創業者が健在でリアリティを持って企業について語れるとか、社史が残っているといった環境も必要でしょう。

一方で、社史に類する書籍をよく見てみると、「商品・事業開発ストーリー」のような個別の小さなストーリーが含まれていることに気づきます。書籍の1章分に相当するような小さなストーリーを、社内外に発信する習慣ができていると、大きなストーリーをまとめる時に役立つのです。実際、私が責任者をしているプラットフォーム「PR TIMES STORY」でストーリーを掲載している企業が、書籍を出版しているケースは少なくありません。

社内のストーリーを集める

では、どのようにストーリーを発掘していけばいいのでしょうか。私がおすすめするのは、「ストーリー手帳」を用意すること。日頃から企業ストーリーの「種」を書き留めておきます。

ストーリーを収集する時のポイントは、常に「なぜ?」と問いかけること。なぜそのプロダクトを開発したのか。なぜ人を採用するのか。なぜ資金を調達するのか。なぜ新規事業を始めるのか。あるいは、なぜ事業をやめることにしたのか─。こうした「なぜ」から、企業ストーリーは生まれるのです(図)

「なぜ」から始まるテーマで、社内のストーリーを集めることから始めよう

社内に眠る企業ストーリーを集めたい広報担当者におすすめの方法が、この表にあるような「なぜ?」を意識して、ストーリーの種を集めること。例えば、「なぜ新規事業に挑戦するのか?」と意識しながら、日々の広報業務で見聞きしたことを書き留めておけば、「新規事業のストーリー」を紡ぎやすくなる。小さなストーリーをストックしておくことは、組織の再編や周年など、企業の節目に大きなストーリーを語る際にも役に立つ。

ちなみに、企業にまつわる「なぜ」を、吟味した言葉で短くまとめたのが、企業の「ミッション」や「バリュー(行動指針)」です。これらを策定する過程では、社内でワークショップを開くことがあるでしょう。創業の経緯や、最初のプロダクトは誰の何を解決するためにつくったのか、といったことを振り返ったり、お手本にしたい社員はどんな行動をしているか、などについて議論したり。こうした場面においては、貴重なストーリーがいくつも発掘できるはずです。

ほかにも、決算説明会や採用面接の場に同席する、新規事業のチームに入って取材するなど、「なぜ」から始まるストーリーが生まれる場所に、広報担当者が積極的に赴くとよいでしょう。

例えば、中期経営計画の発表があるなら、なぜ売上高より営業利益を重視しているか、新たな新規事業に投資しようとしているのか、といった背景にある経営者の思いを知ることで、ストーリー手帳のストックを増やすことができるはずです。波及力のあるストーリーの語り手は、経営者に限らず、人事責任者や開発責任者らのこともあります。社内でストーリーが生まれる場所はどこか、今一度見直してみてください。

ストーリーバンクをつくる

ブランド論の第一人者、デービッド・アーカーは、創業者を失ったり合併を経験したりといった企業が変革の時、企業ストーリーのアップデートが必要になること、またそのストーリーが役立つ状況は多種多様なため、「ストーリーのデータバンク(ストーリーバンク)」を持つことに価値がある、と指摘しています*。

*『ブランド論 無形の差別化をつくる20の基本原則』デービッド・アーカー(2014)『ストーリーで伝えるブランド シグネチャーストーリーが人々を惹きつける』デービッド・アーカー(2019年)

自社サイトにコンテンツとして企業ストーリーを蓄積し、ステークホルダーにアクセスしてもらう、という方法もありますが、外部メディアを通じてストーリーを発信し、ストックしておくのも手です。というのも、コーポレートサイトをリニューアルするタイミングで、古いコンテンツが整理され、見られなくなってしまった、もしくはオウンドメディアの運用が継続できず、サイトを閉じてしまった、ということが起き得るからです。

「PR TIMES STORY」は、各社の「ストーリーバンク」としての役割を担ってきました。プレスリリースでは語りきれない、事業・商品の開発ストーリーを、当事者が顔を出し自ら発信することで、共感が生まれ、ステークホルダーとの関係性強化や、メディアからの継続取材につながっています。ロングセラー「キャンパスノート」の新製品開発ストーリーを配信したコクヨでは、社外はもちろん、社内からの反響も大きく「ノートという当たり前にあるものは、当たり前につくられるわけではない、ということがストーリーを通じて伝わり、商品開発にかかわっていない社員にも、商品の付加価値に気づいてもらえる機会になった」といいます。

あなたの社内にも、企業の宝になり得るストーリーがたくさん眠っているはずです。広報担当者の皆さんには、ぜひ「なぜ」から始まるテーマで社内のストーリーを発掘し、コンテンツを蓄積していってほしいと思います。小さなストーリーの発信が、やがて周年の節目など、大きなストーリーを語る上でも必ず役に立つはずです。

イラスト/福田玲子
コクヨは、商品が生まれた背景や商品にまつわる人にフォーカスしたストーリーを「PR TIMES STORY」で発信。親近感の醸成を図っている。ストーリー配信後は、メディア露出効果があったことに加え、記事を印刷して工場内に掲示したところ、多数の社員から広報部門に「読んだよ」という声がけが起こった。これは通常のプレスリリース配信では見られない反応で、社内の商品理解に加えて、関係者のモチベーション向上や、商品への愛着の深化があった。

PR TIMES「PR TIMES STORY」
サービス責任者
遠藤倫生(えんどう・みちお)

1980年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、高等学校教師を経て教育系スタートアップに勤務。27歳の時コンテンツ制作業で独立、政治経済系ニュースの撮影・執筆に携わる。その後SaaSスタートアップの取締役を経て、PR TIMESに入社。PR TIMES STORYのサービス責任者として500社以上の企業のストーリー制作を支援している。

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