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コラム

名作ラジオCMの時間

誰のための「美しさ」か――資生堂「一瞬も、一生も、美しく」のラジオCM

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サムネイル ラジオ好きコピーライターが実践する、ラジオCMの書き方・考え方

前回のコラム「細川美和子さんのコピーと声が好きすぎて丸暗記した、東京ガスのラジオCM」はこちら

音読バージョンもご用意しております。

第9回 資生堂「鏡の中の約束」篇

わたし、ラジオ好きコピーライターの正樂地咲がお届けします「名作ラジオCMの時間」。

第9回は資生堂「鏡の中の約束」篇(2008年)。

「かわいいわね。なんてきれいなんでしょう。」
という女性の呼びかけから始まるこのラジオCM。

少女の髪を梳きながら母親は、呪文のように繰り返した。
かわいいわね。なんてきれいなんでしょう。
少女はうれしくなって鏡の中に微笑んだ。

そうして母から肌の手入れや、髪の美しい結い方を、
娘は学び、親子で過ごす鏡の前での時間が
娘にとってかけがえのないものになったある日
ふと気付いてしまう。

「かわいいわね。なんてきれいなんでしょう。」
この呪文をかけてくれるのは、母親だけで、
母親以外は誰もそうは言ってくれないことに。

それでも娘は鏡の前で微笑み続けた。
母を信じていたから。
するとある日、彼女の前に一人の男が現れて、母と同じ呪文をかけてくれた。

かわいいね、なんてきれいなんだ…母の呪文は、いつか、本当になっていた。
一瞬も、一生も、美しく。資生堂

この作品は、とてもやさしく、ほんの少しチクリとなる。
この少しのドキリで、最後まで緊張感を持って聴くことができる。

自分をかわいいと言ってくれるのが、母親だけと気付いた時の
娘の胸の痛みは、かたちは違えど、経験したことのあるひとは
多いかもしれない。

思春期にふと、自身の見た目を客観視して、現実に落ち込む。
でもそこでまた気付くこともある。

「かわいいわね。なんてきれいなんでしょう。」と言った母親には、
娘を喜ばせたいなんていう下心はなく、ただただ本心で口から出たもの。
娘への愛情そのものなのだ。

かわいさ、美しさは、誰かのためにあるのではなく、自身のためにある。
そんなことは分かっていても、自分のことを一番よく知ってくれている人に
「かわいい、美しい。」と言ってもらえることは、自信になる。

一番信頼している人に褒められ、認められることは、何よりの栄養である。
そうして、自分ひとりで立っていられる強さを手に入れるのだ。

母の呪文を、信頼する人の呪文を、素直に信じられる人でありたい。

  • 資生堂/企業広告「鏡の中の約束」篇(120秒)
  • 〇C/福本ゆみ

NA:かわいいわね。
なんてきれいなんでしょう。
(M)~
少女の髪を梳りながら
母親は、呪文のように繰り返した。

かわいいわね。
なんてきれいなんでしょう。

少女はうれしくなって
鏡の中に微笑んだ。
三面鏡の中の、二人の笑顔は
いくつにも、重なって
少女はますます楽しくなった。

そして、鏡の前に座ることが、
大好きになった。

母は、その後も、
呪文を繰り返した。
かわいいわね。
なんてきれいなんでしょう。
そして、肌の手入れや
髪の美しい結い方を、
教えた。

でも、いつの日か、
少女が気づいていた。
母以外の誰も、
その呪文を
言ってくれないことに。
親の目からだけ、自分が
美しい娘であることに。

しかし、彼女は鏡に
向かって微笑み続けた。
母を信じていたから。
いつも髪をきれいにとかし、
いつも肌を優しくいたわり、

そして、丁寧にメイクをした、
ある日、彼女の前に
一人の男が現れて、こう言った。

かわいいね、
なんてきれいなんだ…

母の呪文は、いつか、本当になっていた。
~(M)~

一瞬も、一生も、美しく。
資生堂

次回2人のスペシャルゲストをお迎えしてお届けします! また皆さまとお会いできますように。

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