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社会学の視点

「悪」の沼にはまる

遠藤 薫氏(学習院大学)

優しい笑みと闇の怒り ギャップが生み出す萌え

秋クールの連ドラで楽しみにしているのが『クロサギ』である。黒丸、夏原武(原案)のコミックが原作で、2006年にも山下智久さんと堀北真希さんの主演でテレビドラマ化された。今作では、平野紫耀さんと黒島結菜さんがまた新しい魅力を発揮してくれるだろう。

そもそも詐欺をテーマにしたドラマは面白い。長澤まさみさん主演の『コンフィデンスマンJP』も楽しかった。古くは、ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの『スティング』(1973年)が最高だった。

自分が詐欺に引っかかるのは絶対嫌だし、そして自分自身は決して詐欺なんてしないけれど、頭の切れる詐欺師が、どうしようもなく悪いやつを痛快に騙すのを見るとスカッとする。暴力ではなく、頭脳で悪を懲らしめる、というのも魅力だ。

主人公の詐欺師はたいてい、強い力を持った者に理不尽に人生を壊された過去を負っている。表面的な人当たりのよさの裏に、悲しい復讐心が潜んでいる。彼を痛めつけた影のボスに対する隠された怒りが頂点に達するとき、鮮やかな一発逆転の知能ゲームで、あれほど傲岸だったボスは、敗北感にうちひしがれる。この、「心優しき者」が「悪」に変わり、弱者が強者を打ち負かすギャップが、心をわしづかみにする。

少し趣は違うが、1960年公開のルネ・クレマン監督の代表作...

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