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社会学の視点

ネガティブ・ケイパビリティと共感(2)

遠藤 薫氏(学習院大学名誉教授)

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心の痛みを美で包む悲しみの〈真珠化〉

前回、「ネガティブ・ケイパビリティ」という考え方についてお話しした。かいつまんでおさらいすれば、「ポジティブ」を追い求めるばかりが、生きる価値ではない。それは時に、競争に勝ち抜き、他者より優位に立つことだけが人生の目的であるかのような思い込みや、自己過信の落とし穴につながる。むしろ、「ネガティブ」な(なかなかうまくはいかない)状態でも、それをありのままに受け容れる力こそが、他者や世界とのやさしい関係につながり、深い幸福を見出す契機となるのではないだろうか、という世界観である。

サントリーBOSSの「宇宙人ジョーンズ」シリーズからは、そんな世界観が伝わってくる。例えば、「ヘッドライト・テールライト2019」篇。木村祐一さん扮する長距離トラック運転手は、一流企業に勤める同窓生に揶揄されたり、行きずりの中年サラリーマンから羨ましがられたり。行きつけのラーメン屋で、ふと「俺は何のために走ってるんやろ」と呟いてみるけれど、子ども店員のチエちゃん(たぶんマンガ『じゃりン子チエ』のオマージュ)に「そんなこと知らんわ」と言い捨てられてしまう。それでも、宇宙人ジョーンズが見せてくれた美しい満月に「もうちょっと走るか」と呟いて、またトラックに乗り込む。「この惑星では、誰もが、長い旅を続けている」と、宇宙人ジョーンズ。中島みゆきさんの楽曲『ヘッドライト・テールライト』

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