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実践!プレスリリース道場

多様な切り口で海外にも露出 累計38万着のヒットに

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出する企業や商品リリースについて、PRコンサルタントの井上岳久が配信元企業に直接取材。背景にある広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを、じっくり分析・解説します。

1回の新商品リリースだけで
終わらせない視点と工夫が
想像以上のヒットを呼び込む!

今回は、コロナ禍に大ヒットし、現在も売れ続けているAOKIの「パジャマスーツ®」を見ていきます。

前段として、2020年春にコロナが流行すると、店舗に「マスクが欲しい」という声が届くように。そこで5月上旬に「抗菌・洗えるマスク」を発売すると、初日にオンラインショップへのアクセスが殺到し、サーバーがダウン。販売数は1200万枚に達しました。この経験から、同社ではユーザーのニーズに素早く対応する重要性を実感します。

同年6月になると、「自宅で仕事をする時、どういう格好をすればいいか分からない」という声が聞こえるように。リラックスできて、そのままオンライン会議にも出られるような衣服の開発が急務となりました。「カジュアルメーカーとの差別化としてきちんと感があり、フィット感がありつつも弾力性があって、シワになりにくい生地になるよう、混紡率を10種ほど試し、2種類を商品化しました」と広報室長の比本佳奈さん。

通常1年かかる開発期間を5カ月に短縮し、11月14日の発売に漕ぎ着けて新商品リリースを配信。消費者の需要に応えた商品ということで反応も上々でした。1カ月後の12月7日には「全店に売場コーナーを新設」という第2弾リリースも配信しています。

実は、第1弾リリースで「ホーム&ワークウェア」だった商品名は、第2弾で「パジャマスーツ®」に。これは発売後に「パジャマみたいなスーツありますか?」と何度か聞かれたという店舗のフィードバックを受け、その方が覚えやすくイメージも湧きやすいと経営会議で変更が決定しました。「当社には、やってダメなら考え直すというトライ&エラーと、決まったら全員でそこに向かって走る社風があります」と比本さん。商品名を急遽変更したため、店内POPのモデル撮影をする時間はなく、当時広報室長だった飽田翔太さんがモデルを務める異例の対応も(P.62のラインナップ拡大リリースに採用)。つまり第2弾リリースの主目的は「パジャマスーツ®」という商品名を広く周知することだったのです。

『ロイター』の配信で再注目

この名称変更が功を奏し、さらに売れ行きが伸びたほか、『ロイター』(トムソン・ロイター)でも配信されました。SNSを見た日本支社が問い合わせてきたそうです。『ロイター』に取り上げられたことで日本のウェブメディアが再注目し、新聞やテレビにも波及していきました。「それだけ全世界的な悩みに対応した商品だったということでしょう。その後、海外メディアからも取材が来て、グーグル翻訳を使って必死に対応しました。アメリカ、台湾、中国などからの個人注文もありました」(比本さん)。

続いて2021年12月には1年間で7万着の販売達成リリースも配信しました。リリース写真で寝転がっているのは飽田さん。この頃に店舗から広報へ異動した矢島明日香さんは、「POPで見ていたパジャマスーツ®のモデルの人だ!と有名人を見るような感覚でした」と笑いますが、それが話のタネとなって、取材時に会話が弾む効果もあるようです。

達成リリースは前出のマスクの時が初めてだったそうですが、達成リリースは「ヒット商品」として捉えられ、「ヒットの裏側」や「開発秘話」といった新たな切り口での記事化や取材が生まれると比本さんも話します。

それでは、3種類のリリースを見ていきましょう。

(ポイント1)まず、パジャマスーツ®のリリースの肝は、最初から数回に分けて新ネタを配信できるよう準備をしていることです。

商品名が「パジャマスーツ®」に変わった第2弾リリースは偶発的に配信することになりましたが、「全ての店舗で展開」など複数の切り口を準備しておいたため、自然な形で配信することができました。この他にも、新ラインナップの発売や全世界に報道されたことなど、頻繁に配信をしています。特にリリースできるネタが無い時期には、こうしてメディアとつなが…

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