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著者インタビュー

生成AIを超える価値創出は収拾する情報の質と量で決まる

江尻俊章氏(ウェブ解析士協会)

ずるい検索
賢い人は、「調べ方」で差を付ける

クロスメディア・パブリッシング
江尻俊章/著
320ページ、1958円(税込)

情報があふれ、技術革新により生成AIを活用したツールも次々に登場している昨今。膨大な情報に簡単にアクセスできるようになる中で、「現代はあらゆる仕事の成果が収集した『情報』の質と量に左右される」と、著者でウェブ解析士の江尻俊章氏は強調する。

「自社の評価が知りたい時や新施策を企画する時などにも情報収集は欠かせません。AIを超える業務成果を発揮するには、質の高い情報を日々収集し最大限に活用することが重要です」。

一方で昨今の傾向として「個人に届く情報が“調教”され、新たな発見につながらない状況」と江尻氏。検索プラットフォームの度重なるアップデートで検索上位に表示されるのは、信頼性はあるが新鮮味がない情報ばかりに。レコメンド機能の影響で、集まる情報も自分の趣向に最適化されてしまう。

そこで本書では、江尻氏が長年マーケティングに携わり「誰」が「どんな商品を欲しがっているか」を追求してきた経験から、目的別の検索方法と各手法に最適なツールを紹介。「チェックしたいサイトの情報を自動収集する」といった仕組み化の手法から、「Twitterで顧客の生の声を知る」などの広聴に関する手法、またコンテンツづくりに直結する手法まで、幅広く掲載している。

では広報担当者が、すぐに活用できる検索術は何か。「自社のイメージや認知を高める施策を企画する際などには、SNSで複数アカウントを活用し『生活者の生の声』を収集することを推奨します」と江尻氏。SNS上の情報は検索プラットフォームに上位表示される情報と比べ、タイムリーに生活者の声やトレンドを把握できる。

またSNSごとに分析ツールを導入すると、自分が「本当に欲しい情報」を日々収集できる体制をつくることも可能だ。情報の偏りを最小限に抑えるために複数のアカウントを運用したり、得たい情報に合わせてSNSを使い分けたりするのもポイントと言える。

「顧客の生の声を深く理解するには、アクセス数などの数値の分析に加え、SNSの活用で『文脈の中から個々の生活者の本音を推し量る』、いわば“国語的”な分析も欠かせません。全ての数字は一人ひとりの行動の結果です。SNS分析で仮説を立ててから数値を見るのが効果的です」(江尻氏)。

アナログと連動した多角的な検索力

ただ本書は単なるツール活用のハウツー本ではない。「人」から情報を集めるというアナログな“検索”ノウハウも紹介するほか、江尻氏が「情報収集に長けている」と感じる、さまざまな分野のスペシャリストへのインタビューも掲載。「アントレプレナーに聞く『世の中を見極める2つの視点』」をはじめ、生成AIの登場などで目まぐるしく変化する時代の中でも廃れることのない考え方など、情報収集への総合力を養うヒントを示したという。

「プラットフォームでの検索では答えが分からないことも多いですし、本当に欲しい情報を得るには自らの足で取りに行くことが求められる場面もあります。また今注目されている生成AIを活用するにも、適切な問いを立てる力や、上がってきた答えが正しいかの判断力が問われ、その土台として私たちには物事を多面的に『知る』ためのスキルが必要です」と江尻氏。

そのうえで「企業の広報担当者が、価値のある情報を収集する検索手法を知ることで、インターネット上では容易に探すことができない『価値ある情報』を発信するヒントにしていただきたいです」と語った。



ウェブ解析士協会 代表理事
情報価値研究所 代表取締役社長
江尻俊章(えじり・としあき)氏

2012年ウェブ解析士協会(WACA)代表理理事就任。2016年に情報価値研究所を設立し、現職。著書に『繁盛するWebの秘訣「ウェブ解析入門」』(2011年・技術評論社)など。

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