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大学広報ゼミナール

「ギミック的な広告」は大学でも効果的なのか?

鈴木洋文(高崎商科大学)

私が勤める高崎商科大学は「ACC CM FESTIVAL(現ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS)」のラジオCM部門でゴールドを受賞したことがあります。表彰式には学長にも同席してもらいました。勤務先である大学のリーダーが壇上で表彰される姿を見ることは、広報担当者として誇らしい出来事でしたが、その反面、名立たる大企業の受賞CMと比較すると、本学のものはかなりシンプルだとも感じました。

また、地域連携活動として企画した、「“走る”電車シンポジウム」では、隣接する鉄道の車両を貸し切って車両内で学び、帰路の車内でビールを飲みながら参加者の皆さんと交流を深めました。「大学がビールパーティーやるなんて、最高だよ!」と喜んでいただけましたが、ビールパーティーという“普通”のエンタメ活動で大きな称賛を得られることに面白さを感じたものです。

ACCで受賞したラジオCM「蚊の遺言」は、大学がFMという電波に乗せる広告としては確かに意外性のある内容でした。また、「“走る”電車シンポジウム」でのアルコールの提供は、大学にとってはチャレンジングなことと捉えられるかもしれません。これは大学に対する「格式」というバイアスによる効果だと考えられます。大学広報の難しさは、そんな「格式への期待」にもあると言えます。

「アカデミックな大学」の広告への評価

書籍『芸術の売り方 劇場を満員にするマーケティング』(ジョアン・シェフ・バーンスタイン著、英治出版)では、クラシック音楽や演劇、ジャズ、オペラなどの芸術ビジネスにはマーケティングが不足していると解説しています。また、この問題点は、社会批評家をはじめとしたエリート主義者たちが芸術に対して何かと意義を求めたがることにあると解説されています。

大学広報においても格式を過剰に重んじるあまり、思いの届かないコミュニケーションが多数存在していると感じます。しかし、アカデミックであることを無視し、ユーモアやギミックさを求めすぎると、行きすぎた広告とされ、嫌悪感を抱かれる危険性も伴うでしょう。

『Get Up Stand Up!たたかうために立ち上がれ!』(Saku Yanagawa著、産業編集センター)には、スタンダップコメディアンとして活躍する柳川朔氏の軌跡が紹介されていますが、同書の中では、「日本のコメディアンには“親しみやすさ”が求められ、アメリカのスタンダップコメディアンには“論理性”が求められる」と記されています。

日本のエンタメ文化に慣れ親しんだ私たちは広告で“親しみやすさ”や“面白さ”を伝えようと努力しますが、大学のプロモーションには、格式の高さや学問(アカデミック)への帰結を想起させる…

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