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クリエイター「私の編集術」

メディアというコンテンツの乗り物に 誰も言語化できてなかった新たな視点を載せて、届ける

金泉俊輔氏(NewsPicks Studios)

出版・メディアで仕事をする人にとって必要な能力のひとつ「編集力」。しかし、ビジネスの世界の意思決定はすべて適切な情報編集の先にあると考えると、広告・マーケティングの領域においても、表現力だけでなく情報の取捨選択・整理といった編集力が必要なのではないでしょうか。本連載では、出版業界の編集者の方はもちろん、広義の意味で編集力を生かしている方に、編集術に対する考えを聞きます。

    金泉俊輔が考える「編集」とは

    ☑大切なのは、制約のあるスペースに何を残すかを考えられる「引き算思考」

    ☑「時事性」「新規性」「批評性」の3つが備わった良い企画を出せること

メディアというコンテンツの乗り物に
誰も言語化できてなかった
新たな視点を載せて、届ける

足して、掛けた後に「引き算」する力

編集とは何かと考えるとき、「異なる種類の物事を足したり、掛け合わせたりして新しいものをつくること」と聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。私の編集観もそれに近しいものなのですが、前述した編集の定義の中で目を向けるべきなのは、新しいものをつくり、物としてアウトプットする前に行われる「引き算」のアクションです。

「引き算」とはどういうことか。まず、皆さんが思うメディアの編集をイメージしてみてください。取材したり、撮影したり、いろいろな物事を足し掛けしていって、ひとつのコンテンツにしていることは想像がつくと思います。

ですが、コンテンツを届けるためにはコンテンツを載せる乗り物が必要です。ここで言う乗り物とは、テレビや雑誌、SNSプラットフォームなどのメディアの存在。そう考えると、メディアと言われるものには、スペースや時間など、載せられる容量に制限がある場合が多いことがわかりますよね。つまり、メディアには、足し掛けしてつくったコンテンツをすべて載せられるわけではないということ。ここで必要になるのが「引き算」のアクションなのです。

足して、掛けて、新しいものをつくった後に、何を残して、何を削るのか。要は「メディアに載せて何を伝えるべきか」という取捨選択や引き算ができる力こそ、私は「編集力」なのではないかと考えています。

きっと、マーケターもクリエイターも広報担当も、メディアという広告枠やSNSのような制約が設けられたスペースに、「もっとも伝えたいこと」を残して載せるはずですよね。そこで、いわば無意識的に行われているのが「引き算」なのです。

編集で求められる必要なスキルは、『宣伝会議』の読者である皆さんも知らぬ間に活用しているのではないでしょうか。そして、この編集力が生活者に何かを伝える際の肝になっていることもわかるはずです。

「新規性」を見つけるには自分の中の違和感を理解すること

とはいえ、アウトプットとして出す前には企画を立てるという行為が必要不可欠です。前に述べた言葉に置き換えると、「足し掛け」の部分のことですね。引き算をする前に、素材となる良…

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マーケターは、商品価値を伝える編集者である
妄想をかたちにできる編集者が世の中に「面白い」を生み出すことができる
編集の構成要素は「選択」と「表現」 そこにセンスは必要ない
編集という行動を言葉にした途端 拡張の可能性は止まる
編集は3つの要素を基にして「何にもできない人が、何でもできる」こと。
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