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実践!プレスリリース道場

結果を詳細に伝え地方メディアで話題に、日本野菜ソムリエ協会の「コンテスト発表」リリース

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出する企業や商品リリースについて、PRコンサルタントの井上岳久が配信元企業に直接取材。背景にある広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを、じっくり分析・解説します。

2023年2月、日本野菜ソムリエ協会が「第1回 全国いちご選手権」を開催し、その結果が多くのメディアに取り上げられました。近年、企業主催のコンテストも増えているので、今回は結果発表で注目を集めるリリースについて解説したいと思います。

同協会は2001年に発足。「野菜ソムリエ」の資格は当初、調理人や販売者などの野菜を扱うプロを想定していましたが、健康に気をつかうモデルや芸能人などが取得し始めたことから趣味の資格として広まり、約7万人の野菜ソムリエを生み出しています。

協会では毎月、野菜ソムリエによる品評会を行っており、2021年から特別版として1種類の青果物に特化した品評会「全国青果物選手権」をスタート。毎回、全国の生産者から自信作を募集し、評価することで商品価値を高め、生産者を応援することが目的です。

全国いちご選手権は63品のエントリーがあり、30人の野菜ソムリエらが実食して評価をしました。応募もリリースを使って募集した他、野菜ソムリエのネットワークからも応募があります。外部の後援を取っていないのは純粋に協会の基準で評価するためで、審査員はどの程度なら甘いと感じるかなど、基本的な味覚基準を揃えた上で厳正に評価に当たっているそうです。

私もよくカレーの審査を依頼されますが、例えば1日で30品を審査するのはかなり大変です。いちごも前半と後半に分けて審査したということですが、その苦労がうかがえます。

コンテスト翌日に結果を配信

厳正なる審査の結果、最高金賞1品、金賞2品、銀賞3品、銅賞6品、入賞23品を選出。優秀ないちごが多く、事前の予想より多くのいちごが受賞する結果となりました。全国から応募があるため表彰式は開催せず、受賞者には賞状などが贈られます。2月2日に審査を行い、翌日の3日にリリースを配信しました。

では、そのリリースを見てみましょう。

(ポイント1)企画の趣旨や背景などはリードで簡潔に済ませています。結果発表のリリースであるため、結果に多くのスペースを割きたいからです。

「第1回 全国いちご選手権」開催リリース

(ポイント2)本文は、まず全体の結果を表組で載せ、その後に銅賞以上の12品を写真と「評価員のコメント」「生産者のこだわりポイント」でまとめています。先に全体像が把握できて、分かりやすい構成です。写真は審査に使ったプロフィール票といちごを掲載しているので臨場感があります。

1枚目冒頭の、エントリーしたいちごを一堂に集めた写真もユニークで、「これまでもミニトマト100個を並べた写真など、規模感が伝わるような写真を載せるようにしています。メディアでもこういった写真が使われることが多いです」と同協会新規事業部長で広報も担当する佐藤泰之さん。

圧巻は銅賞以上全12品を写真入りで、入賞23品を文字情報で掲載しているところです。そのため全体の枚数は6枚になっており、「リリースの枚数は少なく」の基本からは外れています。

(ポイント3)けれど、この場合は多くの県や地域を載せることで、メディアの取材を呼び込む役割を果たしているので、これでいいと思います。

結果発表リリースというと、最高金賞受賞者などに喜びの声を聞き、顔写真を載せる紙面を思い浮かべる人も多いと思いますが、協会では発表の早さに重きを置いています。翌日にはSNSで発表、普段から付き合いのある30~50...

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