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著者インタビュー

人的資本経営に欠かせないのは従業員の「活力」「熱意」「没頭」の向上施策

松丘啓司氏(アジャイルHR)

エンゲージメントを高める会社
~人的資本経営におけるパフォーマンスマネジメント

ファーストプレス
松丘啓司/著
200ページ、1650円(税込)

企業の持続的な成長を図る手段として「人的資本経営」が注目される昨今。人の持つ能力を資本と捉え、その価値を最大限に引き出す考え方だが「人的資本の価値を最大化するには、従業員の心理的・精神的なエネルギーである『ワーク・エンゲージメント』の向上が欠かせない」と松丘氏。しかし国内企業の多くでは、「ワーク・エンゲージメント」への理解が十分ではない。そこで本書では「ワーク・エンゲージメントとは何か」「その向上が、企業にどのような効果を生むのか」といった背景から、新時代の組織マネジメントの在り方を詳しく解説している。

エンゲージメントの3つの要素

「ワーク・エンゲージメント」とは仕事に対する従業員のポジティブな心理状態を指す。これが高まると仕事の成果につながることが『労働経済白書』(厚生労働省)などの調査でも示されている。これを構成する要素は、仕事中のエネルギーレベルや心理的な回復力が高い状態を指す「活力」、仕事への意義ややりがいを感じて深く関与している状態を指す「熱意」、仕事に集中することで満ち足りた気持ちになっている状態を指す「没頭」の3つだと言う※1

※1『新版 ワーク・エンゲイジメント』(島津明人)

「ワーク・エンゲージメント」の高・低は本人の意識以上に、社内の人事制度や社内コミュニケーションといった周囲の「動機付け」に左右される。ポジティブな「動機付け」は、具体的には仕事自体の楽しさによる「楽しみ」、自分の仕事が社会に役立っている実感を得られる「意義」、仕事を通じて自分の可能性が広がると信じられる「可能性」。中でも「楽しみ」は、成長実感や達成感を継続的に得られるために、最もプラスに作用する※2

※2『従業員パフォーマンスを左右する6つの動機』(リンゼイ・マクレガー、ニール・ドシ)

ただ「プラスの動機付けが機能するには、従業員が『自律』的な状態であることが前提」と松丘氏。具体的には「やるべき仕事を自分で決められる」「仕事のやり方を自分で考え、実行に移すことができる」といったことを従業員が実感できる状態が欠かせない。

「多くの日本企業では、『自律』ではなく従業員の『他律』的姿勢を生み出すマネジメント方法を採用しています。目標を達成しないと叱られる、評価を下げられると恐怖心をあおる圧力的な動機付けの色が濃く、『ワーク・エンゲージメント』の低下につながっています」と松丘氏は警鐘を鳴らす。

そこで本書では、従業員の「自律」を促し「楽しみ」「意義」「可能性」を感じさせる風土づくりとして、人事制度の変革に加え、従業員へのコミュニケーションの必要性も説いている。

心理的安全性を高める

では具体的に、広報担当者ができることは何か。例えば、従業員のエンゲージメントを測定することで組織の状態を可視化する「エンゲージメントサーベイ」を活用した施策が挙げられる。ここで重要なのは、調査を実施するだけでなく、結果に合わせて不足点を改善するためのコミュニケーション施策を実施することだ。

もし「仕事へのモチベーションが不足している」ことが分かった場合、リーダーとの1on1の実施により従業員が仕事に「楽しみ」や「意義」を感じられる環境づくりが考えられる。また企業のパーパスやビジョンを明確にした上で従業員の行動に対するポジティブなフィードバックの実施や、「キャリア研修」の導入も有効だという。

「本書では、制度づくりと従業員への働きかけの双方を踏まえた上で、『日本企業がすぐに導入できる方法』も多数示していますので、ぜひ参考にしてください」(松丘氏)。



アジャイルHR代表取締役社長
松丘啓司氏(まつおか・けいじ)

東京大学法学部卒業。アクセンチュアのパートナーを経て起業。企業向けに人事コンサルティングを行う。『人事評価はもういらない』『1on1マネジメント』など著書多数。

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