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社内コミュニケーション 従業員が参画したくなる伝え方

「社員の思い」を伝える社内報 目指すべき「人物像」の『腹落ち』図る

ロート製薬

「人的資本経営」の一環として、社員の「自律的」な成長を促す風土づくりに関心が集まる昨今。パーパスへの理解や目指す人物像を伝えていくことも重要となる。その実現に有効な社内コミュニケーション施策に迫る。

DATA
創業年 1899年2月
従業員数 1599名(2022年3月期現在)
広報体制 広報・CSV推進部 広報・CSV推進グループ 10人

ロート製薬は、パーパス(存在意義)を実現するため、「“個”を尊重した会社と社員の共成長により、Well-beingな社会の実現」を目指し人財育成に注力している。パーパスは、「世界の人々に商品やサービスを通じて健康をお届けすることによって、取り巻くすべての個人や社会の『Well-being』に貢献していくこと」。

この実現には、社会が求めるWell-beingを軸に新しい価値を創造し続ける人財の育成も欠かせない。そこで多様な「個」が主体的に活躍することを目指すべく、企業と社員のパーパスのマッチングを図る社内コミュニケーションを実施している。

求める人財像の明文化

人財育成を強化する背景について「当社には、『社員の成長なくして会社の成長はない』との考えが企業のDNAとして根付いています」と語るのは、広報・CSV推進部 阿子島文子氏。創業時から価値行動規範として掲げている「7つの宣誓」の一文には「まず人がいて、輝いてこそ企業が生きる。主役は人、一人ひとりが自らの意思と力で自立し、組織を動かして行きます」との記載がある。

こうした中、組織の拡大や不確実性の高い事業環境への変化に対応するため、2019年に発表した「ロートグループ総合経営ビジョン2030」では「人財育成」への考え方を改めて明文化。さらに2022年には、「人事制度」を20年ぶりに改訂した。

新「人事制度」は個々が自分のパーパスやキャリアを自律的に担いながら、全社員で共通のゴールへ向かう「全員戦力化」に向けたWell-being経営を目指す内容で、ドライバーとなる4つの施策を進めている()。

*『全員戦力化 戦略人材不足と組織力開発』(日本経済新聞出版)守島 基博/著

① 動的人財マネジメントによる異動・組織構築
各自を育む目と貫く目で抜擢、登用

② 「プロの仕事人」としての仕事の価値で評価
ロートバリューポイント(RVP)(毎期評価)

③ さらなる高見を目指してWell-beingを向上
Well-beingポイント(WBP)(半期毎の自己評価)

④ 自律的キャリアと学びの継続を目指す 複業・兼業:Career Ownership
Employee Experienceを高める

図 新「人事制度」で策定した4つの指標
新「人事制度」で掲げた4つの指標。社内コミュニケーションでは、まずは一人ひとりの働く意識である「プロの仕事人」の理解に重きをおいた施策を展開している。

出所:ロート製薬

これらの施策において、目指すべき指標のひとつが「『プロの仕事人』になること」だ。「プロの仕事人」とは、「同社のパーパスを指針に、事業活動に主体的に参画・挑戦し、継続して学び続けて社会に価値を創出できる人財」を指す。これを目指す上では、企業の「パーパス」への深い共感をもち、それを社員自身の「パーパス」とマッチングできていることが重要となる。

そこで、それぞれの社員が「プロの仕事人」として、どのような「パーパス」をもとに事業に取り組んでいるかを伝えるべく、ウェブ社内報の運用に注力している。

「社員の思い」が見える社内報

ウェブ社内報「SHI ROHTO+(しろうとプラス)」は、2019年に開設された。社内の新たな取り組みやマネジメント層や社員の素顔を軸に、その時々のトピックスを社員へタイムリーに伝えている。

編集方針としてこだわっているのは、社員1人ひとりが「何を目指して仕事に取り組んでいるのか」「この取り組みの背景にはどのような思いがあるのか」といった「プロの仕事人」を目指す上での「社員の思い」にスポットを当てていることだ。「特に『ほかの部署』が『どのようなテーマに取り組み、仕事の価値を生み出しているか』を認知することは、『プロの仕事人』を目指すモチベーションを保つためにも重要です」と同広報・CSV推進部の岩脇紀子氏。

「同じ部署の中で日々業務を行っていると、良くも悪くも部門や自身のテーマに集中し新たなことに挑戦する機会が失われてしまうからです。加えて...

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