環境問題が進むにつれ、二酸化炭素排出削減の方針を各国、各企業が打ち出している。我々は通常二酸化炭素排出を考えた場合、石油、自動車、航空会社、もしくは工場などをまず想像する。しかし、実際問題、多くの消費者はネットブラウジングによって二酸化炭素が排出されることを認識していない。そこで、グローバルメディアエージェンシーIPG Mediabrands のロンドン支社でメディア営業を担当する忍久保恵太氏が、何故ネットブラウジングが二酸化炭素排出に影響しているかと、IPG Mediabrandsとデジタル広告・メディアのサプライチェーンの排出量データを提供するScope3Scope3がサステナブル・メディアを推進してゆくかを解き明かす。
サステナブル・メディアの役割と目的とは
サステナブル・メディアは、二酸化炭素排出量を極力減らし、そして更にNet Zeroの未来に向けた行動変容を啓蒙・意識させ、変化を推進してゆく役割を果たしている。
まずは、我々に身近なデジタル広告における二酸化炭素排出量を理解する。
インターネットは地球上の総炭素排出量の4% を占めており、航空業界以上の二酸化炭素排出量を占めている。デジタル広告のサプライ チェーンがサイトの読み込みに必要なエネルギーとデータの一部を担っている。
出典 Yahoo Lifestyle
注1)
標準的にデジタル広告がどのくらいの二酸化炭素を排出していれるかを概観してみましょう
まず、100 万回の広告インプレッションを配信するために必要なエネルギーは、排出される CO2 の約 1 トンに相当します。これを分かりやすく立て直すと:
→ 米国マサチューセッツ州ボストンから英国ロンドンへの往復 1 回
→ 121,000台のスマートフォンをフル充電
→ 約250万本のプラスチックストロー製作
出典:EPA Greenhouse gas emissions calculator March 2022
注2)
デジタル広告はどのように二酸化炭素排出を引き起こすのか?
インターネット上の二酸化炭素排出量がどこから発生するかを理解するには、まず、排出がスコープと分類されている事を理解する必要がある。スコープは3つに分かれている。
スコープ 1 および 2 の排出は、組織の事業活動によって引き起こされ、スコープ 2 排出量は、企業の建物、施設、車両に電力を供給するために必要な電力網からのエネルギー消費と移動によって発生する。
スコープ 3 排出量は、企業のサプライ チェーンによって生成され、デジタル広告業界の組織の総炭素廃棄物の 90% 以上を占めている。
出典: GHG Protocol
注3)
デジタル広告におけるスコープ 3 の炭素排出量をよりよく理解するには、プログラマティック サプライ チェーンで説明すると、広告主、広告代理店、出版社に至るまでの間にサーバーや制作に関わるエネルギー放出による二酸化炭素排出が行われる。
出典: Sharethrough
注4)
ブランド、代理店はどのように対応してゆくのか?
IPG Mediabrands と Scope3 がパートナーシップを結び、ネットゼロへのロードマップを提供するサービスを導入することに同意した。
契約の一環として、IPG Mediabrands はクライアントの排出量の測定および削減機能を提供すると同時に、デジタル エコシステム全体がメディアによる二酸化炭素排出量を大規模に減らすことを推進する。
- 測定と報告: IPG Mediabrands は、すべてのデジタル広告インプレッションの排出量データにアクセスできるようになり、広告を消費するエンド ユーザーによって生成される排出量を計算する。
- カーボン ニュートラルなメディア製品: Scope3 のグリーン メディア製品は、排出量データを使用して、二酸化炭素量を測定した上で、広告価格にカーボンコストを織り込みことによって、カーボン ニュートラルなキャンペーンの活性化を達成するための明確で測定可能な道筋を提供する。
- 業界の関与: Scope3 の排出量測定を活用して、IPG Mediabrands はデジタル サプライ チェーン全体と対話・コラボレーションを開始し、排出量を削減するために最適化された広告配信方法を促進する。
今後温暖化が進む中、メディアマーケティングが環境に与えている影響をより一層理解し、業界・企業レベルで教育及び継続的に排出削減を目指す必要があり、マーケティング担当として個人でできることも考えていく必要がある。
出典:IPG Mediabrands & Scope 3
注5)
注1)
https://uk.news.yahoo.com/joined-the-declutter-with-yahoo-movement-heres-how-your-efforts-helped-plant-200-trees-014436298.html
https://designflyover.com/carbon-footprint-of-the-internet/
注 2)
https://www.sharethrough.com/blog/why-the-ad-industry-should-focus-on-scope-3-emissions
注3)
https://www.mightybytes.com/blog/scope-3-emissions-in-your-digital-supply-chain/
注4)
https://www.sharethrough.com/blog/why-the-ad-industry-should-focus-on-scope-3-emissions
注5)
https://www.scope3.com/news/ipg-mediabrands-and-scope3-form-groundbreaking-partnership-to-enable-clients-to-move-toward-net-zero-in-media-buying-via-emissions-measurement-compensation-and-reduction
IPGメディアブランズ
IPGメディアブランズは、インターパブリックグループ(IPG)において、データ分析に基づきメディアおよびデジタルを通じたマーケティングソリューションを提供する企業グループです。メディアブランズは、クライアントのエージェンシーとして世界中で約400億ドルのマーケティング投資を管理しています。また、数々のアワード受賞歴を誇るフルサービスエージェンシーネットワークのUMとInitiative、および革新的ソリューションのスペシャリスト組織であるReprise、MAGNA、Orion、Rapport、Mediabrands Content Studio、IPG Media Lab等を通じて戦略的なサービスとソリューションを提供しています。 メディアブランズのクライアントには、幅広い業種にわたり、世界で最も知名度の高い、アイコニックなブランドが多数含まれています。また、130カ国以上でダイバーシティに富む13,000人以上のマーケティングスペシャリストが活躍しています。日本では、メディアプランニングとバイイングの両方を提供できる唯一のグローバルエージェンシーです。1960年のマッキャンエリクソン博報堂設立以来、2007年のIPGメディアブランズジャパン設立を経て、グローバルと国内双方のクライアントと取引を持っている。
執筆者 忍久保恵太 Keita Shinokubo
三洋電機に勤めていた父の仕事の関係で、2歳から海外で過ごす。2歳から6歳までアメリカのロサンゼルス、7歳から15歳までイギリス、15歳から18歳までドイツのミュンヘンで過ごす。大学はイギリスへ戻り心理学を専攻。卒業後日本に戻り、自分のルーツを探しに日本へ帰国就職。心理学と美術が好きだったので、広告代理店志望で当時マッキャンエリクソンのメディア部大阪支社へ就職。テレビ朝日とテレビ東京の局担を3年過ごし、2003年から東京でメディアプランニング担当。2007年にイギリス人の妻と英国へ帰国。2007年から2008年は念願のバックパック旅行で日本を1か月半旅し、インド、東南アジアを7か月旅をする。イギリスに戻り、マインドシェアのグローバルビジネス部に就職。以降グローバルビジネスを担当。現在はユニバーサル・マッキャンでエクソンモービル得意先のヨーロッパビジネスの営業として束ねる。得意先のビジネス・コミュニケーション目標設定から、全体的なマーケティングコミュニケーションの役割、メディアを通じてどの様にターゲット層に合ったプランを設計し、効果を図るソリューションを提供。日本で得たローカルの知識ベースに、グローバル営業の基礎として活かしてます。女の子二人(11歳と8歳)を持ち、趣味はブラジリアン柔術です。