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SNSに最適化するクリエイティブ攻略

「バズらせ」から「ブランドづくり」の場へ プランナーに聞く 今の時代のSNSの役割とは?

花田 礼(電通)市川晴華(CHOCOLATE)荻原海里(博報堂)

今、企業やブランドのコミュニケーションにおいてSNSはどのような位置付けにあるのだろうか。自身の企画で「バズ」を起こした経験のある3人のプランナーたちに、SNS活用の現在地を聞いた。

クライアントと向き合う中で見えてきたSNSの位置付け

──皆さんが担当する仕事において、SNSはどのような位置付けとされていますか?

荻原:これまではSNSを“売りに直結する”施策の実践の場として活用する企業が増えている印象がありました。一方で最近は、SNSがブランディングに寄与することも企業が認識し始めている気がします。ブランディングとビジネスの両方の側面で、SNS活用の感覚知が企業にたまってきているんじゃないでしょうか。

花田:マクドナルドさんや日清食品さんは、SNSでの売りとブランディング、双方を意識して取り組まれている印象です。ただもちろんそこはグラデーションで、とりあえずSNSに挑戦してみたい、という企業さんもいますよね。

市川:私がよくいただくのが、売りに繋げる目的で、商品の訴求ポイントが3つぐらい用意されていて、うちメインの1つはテレビCMで、あとの2つはSNSでやりたい、というケース。CMで言えなかった、拾い切れなかったことをWeb動画で補完するイメージです。でも個人的には、SNSはもっとポテンシャルがある場所なのに……という気持ちもあって。

荻原:たしかに企業側のリテラシーも高まったためか、オリエンのタイミングでSNSの役割が割り振られていることが増えてきましたね。

市川:そうですよね。今の時代の企業のTwitterやYouTubeなどのSNSって、その企業のあらゆる広告やコンテンツが集積していき、全体としてブランドを体現する場だと思うんです。だから個々で目的を割り振るよりも、全体として目的や世界観を定めてそこから逆算した方が効果的なのでは、とも考えています。

荻原:消費者のリテラシーもそれだけ上がっていますし、矛盾があれば違和感を生じさせてしまいますしね。制作現場においても、SNS広告の撮影はCM撮影の合間の限られた時間のみで、どうしてもクオリティを上げづらい……というのは“あるある”じゃないでしょうか。

市川:それでも成り立つ、と思われがちですよね。SNSはまだまだ、広告にとっての「便利な場所」として認識されている側面もあるんだと思います。

花田:テレビと違って尺が限られているわけじゃないから、良くも悪くも詰め込もうと思えば何でも詰め込めますからね。そういった出稿先のプラットフォームとしてのSNSの現状がある一方、消費者の生活圏としてのSNSは、広告が多くの人に受け入れられるための装置の役を担っていると思っていて。僕はテレビやWeb動画、OOHをやるにしても、必ずその真ん中にSNSを意識しています。

個人的には広告をつくるというよりコンテンツをつくりたいと思いながら仕事をしているんですが、たとえばテレビCMがSNSでバズって多くの人に面白がってもらえる時って、消費者にとってその広告は、広告というよりもコンテンツとして受け入れられているということじゃないですか。

こういう風に広告がコンテンツに“昇格”することって今はほとんどSNS経由で起こっているんですよね。今の時代、信頼できる人からもたらされた情報が一番信頼できて広がりやすいので、何をやるにしてもSNSという場での受け取られ方は意識しています。

市川:面白い。広告がSNSを通じて拡散されることでコンテンツに昇格していくと。

花田:そうそう。CHOCOLATEの栗林(和明)さんが以前Podcastで言っていたことで共感したのが、「今の若い世代って広告のスルー能力がめちゃ高い」と。広告を見た瞬間本能的にそれをスルーすることを「目が滑る」とも表現されていて。僕もTikTokを見ていても、広告っぽさが出ると0.2秒ぐらいでスワイプしてしまうんですよ。ただ、“あの人がシェアしてる”“いいね数が1万を超えている”となると、広告っぽさがなくなってコンテンツとして受け取れるんですよね。その反応を含めて企画することが大事だと思います。

「その人を本気で応援している人」が多い人がSNSでは話題になりやすい

──皆さんの担当された企画でのSNSの活用例を教えてください。

花田:2022年4月に公開された、サントリー食品インターナショナル「クラフトボスミルキープレッソ」のテレビCM/Web動画「コーヒーニューニュー」では、テレビとWeb動画でキャストを変えることでSNSでの話題化を試みました。テレビCMは役所広司さん、神木隆之介さん、杉咲花さんという「BOSS」のおなじみのメンバーが、Web動画ではパークマンサーさん、ARuFaさん、TikTokerの金子みゆさん、小島よしおさん、はんにゃの金田哲さんらが、それぞれ音楽に合わせて「ニューニューダンス」を踊るものです。表現は同じだけどキャスティングを変えたことで、後者は特にSNSで広がっていきました。

花田さんが担当した、サントリー食品インターナショナル「クラフトボス ミルキープレッソ」の「コーヒーニューニュー」。テレビCM(上)とWeb動画(下)とで「ニューニューダンス」を踊るという企画自体は同じだが、キャストを変えている。Web動画ではパークマンサーさん、ARuFaさん、TikTokerの金子みゆさんなどコアなファンがいる人たちに依頼したことで、SNSでの話題化に至った。

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