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デザインの見方

歴史の瞬間を目撃した読書体験

日高英輝

『The Best of LIFE』(タイムライフブックス、1973)
©アルフレッド・アイゼンスタット
©ジョー・ローゼンタール

1973年にアメリカで発行された写真集『The Best of LIFE』は、僕にとって“座右の銘”ならぬ“座右の書”のような大切な存在です。本書に収録されているのは、グラフ誌『LIFE』に掲載された写真の中からえりすぐられた傑作の数々。『LIFE』は、フォトジャーナリズムの文化をつくった先駆者的存在で、1936年の創刊から1972年の休刊までの36年間で1864冊発行されました。『The Best of LIFE』は、その集大成ともいえる1冊です。

僕が『The Best of LIFE』を初めて手にしたのは中学生の頃。小学校の教師をしていた父の部屋の本棚で見つけました。スリーブケースに入った横28センチ×縦35センチの大型本で、背表紙は黒が基調で厚みもあります。父の本棚には、小説や漫画のほか、さまざまな趣味の本がぎっしり詰まっていましたが、その中でもひときわ目立っていました。当時、父の目を盗んで本棚を物色するのが密かな楽しみでもあり、『The Best of LIFE』もこっそりひとりで読みました。

そこに掲載されていた写真は、どれも生々しく刺激的で、むさぼるように見た記憶があります。ヒンデンブルク号の爆発事故の写真をはじめ、ロバート・キャパが撮影したノルマンディー上陸作戦の戦場写真、第二次世界大戦の勝利を喜ぶアメリカの水兵と少女がキスしている写真、ケネディ大統領の暗殺事件の写真、人類による月面着陸に...

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