Outlook 2023: グローバル市場動向 ~転換期を迎えるデジタル広告市場~

景気の見通しが立たない2023年、グローバル広告市場はどのような動きを見せるのか。外資系広告会社マッキャンエリクソンの兄弟会社でインターパブリック・グループ(IPG)のグローバルメディアエージェンシーIPG Mediabrands ニューヨーク本社でメディア戦略を担当する副島奈美氏が調査データや企業動向をもとに2023年のグローバル広告市場動向を解説します。

 

インターパブリック・グループ(IPG)の市場調査機関であるMAGNA によるとグローバル広告市場は2023年前年対比5パーセントの成長を予測している。パンデミック後回復していた市場の伸びは、景気の減退により、鈍化する見込みだ。特にアメリカ、ヨーロッパ、日本の成長はあまり期待できない。(注1)

 

(媒体別 米国広告市場、出典は全てMAGNA)


(媒体別 グローバル広告市場、出典は全てMAGNA)

(国別 世界トップ15の広告市場、出典は全てMAGNA)

テレビ、紙媒体の衰退は以前からも懸念されていたが、注目すべきはデジタル広告市場の成長鈍化だ。過去数年、テレビや紙媒体から急速にシェアを奪ったきたデジタルメディアだが、昨年は前年比8.9パーセントの伸びとなり、ここ数年で最も低い成長率となった。パンデミック下でスクリーンに釘付けになっていた消費者が、やっと普通の生活に戻ったということも影響しているが、デジタル広告市場が成熟に達し始めているとも言える。MAGNAの予測によるとデジタル広告は2023年は全体で8.4パーセントの成長率が見込まれている。また、サーチやデジタルビデオが二桁の成長率を見込んでいるのに対し、昨年落ち込みを見せたソーシャルメディアは6.8パーセントの成長率と予測されている。

そのような環境下、Twitter, Google, Meta (Facebookの親会社)は昨年末、今年にかけて大幅な人材削減を実施した。(注2)
Elon Muskに買収されたTwitterはともかく、デジタル広告市場の成長を牽引して来たMeta, Googleの人材削減は珍しい。その背景には様々な要因がある。ユーザー数は減ってはいないものの、Appleのプライバシーポリシーの変更により、広告効果が懸念されているこの二社に対し、広告主が広告料を増やすことに対し懸念を持ち始めている。また、VRやメタバースなどの新商品のビジネスモデル、成長戦略がクリアではない上に、アメリカ、ヨーロッパなどでは独禁法の疑いをもたれているこの二社は簡単には買収などが出来なくなって来ている。Amazon, Bytedance (TikTokの親会社)、Microsoft、 Apple、 Netflix などが欧米広告市場に積極的に参入している中、IPGのイノベーションを担うIPG メディアラボはMeta, Google のデュオポリー(2社が市場を支配している状態)時代の終わりでは、とまで予測している。(注3)

また、このタイミングでGoogleやMetaといったメジャー企業を辞めていくディベロッパーやクリエイターが今後どのようなビジネスを立ち上げていくのかにも注目したい。ガレージどころかベッドルームからでもビジネスを立ち上げることができるようになった昨今、停滞したデジタルメディア業界にブレークスルーがあるとしたらスタートアップ、もしくは一個人が今後スタートするサービスかもしれない。IPG メディアラボの予測によると、すでにGoogleやMetaを通じてネットワークを形成しているディベロッパーは、個々で開発をし続けながらもコミュニティーとして進化する可能性もあるとし、今後の発展が期待できそうだ。(注3)

何千ものスタートアップが「ガレージを開いた状態で作業する」ことにより、活発な実験と競争の時代に突入しようとしています。 – Adam Simon、IPG メディア ラボ

We’re about to enter an era of intense experimentation and competition, as thousands of tiny startups return to “working with the garage open.” – Adam Simon, IPG Media Lab

変化が予測される2023年の動向、今後も追って行きたいと思う。

 

(注1)
TRADITIONAL MEDIA RESILIENT THROUGH ECONOMIC UNCERTAINTY – SOCIAL MEDIA STALLS UNDER HEADWINDS

(注2) 
CNN Elon Musk’s Twitter lays off employees across the company
Forbs Meta Layoffs - Facebook Continues To Cut Costs By Cutting Headcount
Google A difficult decision to set us up for the future

(注3)
IPG Media Lab Outlook 2023: Interregnum Four trends shaping the future of media & technology by Adam Simon 

 

IPGメディアブランズ

IPGメディアブランズは、インターパブリックグループ(IPG)において、データ分析に基づきメディアおよびデジタルを通じたマーケティングソリューションを提供する企業グループです。メディアブランズは、クライアントのエージェンシーとして世界中で約400億ドルのマーケティング投資を管理しています。また、数々のアワード受賞歴を誇るフルサービスエージェンシーネットワークのUMとInitiative、および革新的ソリューションのスペシャリスト組織であるReprise、MAGNA、Orion、Rapport、Mediabrands Content Studio、IPG Media Lab等を通じて戦略的なサービスとソリューションを提供しています。 メディアブランズのクライアントには、幅広い業種にわたり、世界で最も知名度の高い、アイコニックなブランドが多数含まれています。また、130カ国以上でダイバーシティに富む13,000人以上のマーケティングスペシャリストが活躍しています。日本では、メディアプランニングとバイイングの両方を提供できる唯一のグローバルエージェンシーです。1960年のマッキャンエリクソン博報堂設立以来、2007年のIPGメディアブランズジャパン設立を経て、グローバルと国内双方のクライアントと取引を持っている。

執筆者 副島奈美 Nami Soejima

父の仕事の関係で小学校時代をアフリカで過ごす。日本の中学・高校を卒業後米イェール大学に進み、政治経済を専攻。その後東京のソニー(株)に就職し、本社スタッフとして東京・NYオフィスで働く。2003年に米コロンビアビジネススクールに進み、MBAを取得。卒業後は戦略コンサルティング会社、デジタル・エージェンシ―を経て、現在グローバルの大手広告代理店ユニバーサル・マッキャンにてグローバルメディア戦略を担当。クライアントのビジネス成長のために必要となるターゲット層の分析やデータを活用したターゲティング手法などを担っている。2児の母として、女性スタッフの活躍もサポートしている。

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