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広報担当者のための企画書のつくり方入門

「番組」形式のコンテンツを活用したPRの企画書を書きたい!ポイントは?

片岡英彦(東京片岡英彦事務所 代表/企画家・コラムニスト・戦略PR事業)

「広報関連の新たな企画を実現しようとするも、社内で企画書が通らない⋯⋯」。そんな悩める人のために、広報の企画を実現するポイントを伝授。筆者の実務経験をもとに、企画書作成に必要な視点を整理していきます。

「番組」とは何を指すのか

「番組」といえば一般的にはテレビやラジオ放送のコンテンツ(プログラム)のことだった。ところが、最近ではインターネット放送やYouTubeチャンネルの利用が普及し、企業が自社ブランドの強化や販促目的などの外部向けコンテンツとして、また研修や業務マニュアルなど社内向けのコンテンツとしても、インターネット「番組」を企画制作して活用する機会が増えてきた。視聴者の興味関心や動向を把握しやすいメリットもある。これに伴い広報担当者が、自社制作の番組の宣伝(番宣)に携わるケースも見られるようになった。

今回は、PESOマーケティングの視点から「番組」を活用した広報活動について企画書の書き方を考えたい。

視点1
PESOで番組の活用を整理

企業と「番組」の関係が進化

「PESOモデル」とは、Paid Media(広告)、Earned Media(パブリシティ)、Shared Media(生活者のSNS)、Owned Media(自社サイト、公式SNSアカウント)を指す。以前は、一部の社内向け動画を別にすると「番組」と呼ばれるコンテンツに企業が携わるのはPaid MediaとEarned Mediaとしての扱いがほとんどだった。

図1 旧来の企業と「番組」の関係

Paid Media(広告)

●番組提供(スポンサーシップ)として

●クイズ番組での賞品提供など(広義のタイアップ)

Earned Media(パブリシティ)

●ドラマ・バラエティ番組での商品やサービスの提供(プロダクトプレイスメント)

●情報・報道番組への自社商品・新サービスなどの持ち込み(パブリシティ)

●報道部門からの取材依頼への対応(ポジ/ネガ含む報道対応)

Paid Mediaでの「番組提供」への関わり方の場合、番組の前後のCMで、伝えたいメッセージをダイレクトに届けることはできるが、テレビ番組(本編)内に企業メッセージを直接反映させることはできない。放送法上も提供企業の広告メッセージは「番組」とは分離することが原則である。

Earned Mediaとして「パブリシティ」という意味での関わり方の場合は、番組内での扱い方や「放送する・しない」の決定権は放送局側が持つ。また、説明が難しい商品に長い時間をかけ丁寧に説明したり、自社ブランドの魅力について十分な理解を得ようとしたりする際にはテレビパブリシティによる露出は不向きな手法だった。一方で、インターネットの普及に伴い、これまでとは異なる形で企業の広報担当者が「番組」に携わる機会が増えている。

図2 新しい企業と「番組」の関係

Paid Media(広告)

●インターネット番組の活用による企業情報の発信

Earned Media(パブリシティ)

●インターネット番組での企業紹介、商品レビュー

●YouTuberが制作する番組に社員が出演

Shared Media(生活者のSNS)

●番組コンテンツのリアルタイム配信、オンデマンド放送のシェア(拡散)

Owned Media(自社サイト、公式SNSアカウント)

●公式動画サイト内での「番組」の配信(通販等)

●ブランドジャーナリズム(報道活動)として第三者視点で番組を配信

Paid Mediaとしての番組

Paid Mediaの1つのコミュニケーション手法として企業が「インターネット番組」を提供する場合、テレビ放送とは違い、必ずしも番組と企業提供コンテンツは厳密に分離していない。一方で、消費者の誤認を防ぐために、企業と番組との関係(インセンティブ提供等)に関しての「明示」が原則として必要となる。

Earned Mediaとしての番組

Earned Media(パブリシティ)としての「番組」との関わりも変化しつつある。インフルエンサーとも呼ばれるYouTuber、Instagramer、ブロガーなどに対し広報担当者が商品レビュ―などを呼びかけることも普通になってきた。販売前の“デモ機”の貸し出しや試食会の開催などが「インセンティブ」に当たるのか議論は分かれるが、企業側とユーザーとが情報交換の場としてプレス向けイベントとは別に交流会やイベントを開催することは一般的になっている。

インフルエンサー自身興味があれば自らの意思で参加し、自らの「番組」の中で商品紹介などを行うことになる。またこうした「番組」に企業側の広報担当や商品開発者が積極的に出演するケースもある。

Shared Mediaとしての番組

Shared Mediaの視点で考えると、注目したいのは「生活者」と「インフルエンサー」との垣根が極めて曖昧な点だ。Twitter、YouTube、Instagram、TikTokなど、あらゆるSNSにおいて影響力を持つ人々が情報の発信を行っている。かつてインフルエンサーといえば、芸能人やスポーツ選手、モデルなどの有名人だった。今では「生活者の意思決定に影響を与える一般人」=「インフルエンサー」と呼ぶようになっているが、一般人との境界線は“グラデーション”の状態だ。

オンライン上には、テレビ局が制作する番組コンテンツをはじめ、インターネット放送局によるリアルタイム配信、YouTuberによるYouTubeチャンネルなど、あらゆる種類の「番組」が溢れている。そして多種多様な「インフルエンサー」によって拡散されている。この全てを企画書作成の時点で計画しコントロールすることは不可能に近いが、Shared Mediaを含めた情報流通構造の骨格は事前に整理しておきたい(図3)

図3 Earned Media・Owned Media・Shared Mediaそれぞれからの情報流通構造

著者作成

Owned Mediaとしての番組

Owned Mediaとしての「番組」の扱いについてが、広報担当者の頭をもっとも悩ませると言ってよい。例えば、YouTubeや自社の公式動画サイトなどで、広報担当者が自らオリジナル動画を制作し、これを集めた形で「番組」として継続配信する企業も増えている。従来は制作会社に発注していた「番組制作」だが、内製化も検討できるようになった。

私も自社による「番組制作」を相談された場合は、まずは企画書をしっかりと作成した上で、多くの費用をかけずに「パイロット版」を作成することを勧めている。公開しない前提で一度番組を制作することで、社内外の協力者を募りやすくなるメリットがある。

「動画」と「番組」の違いは?

「動画」は通常は1本単位で制作されるが、「番組」は「異なるシーン」や「複数の登場人物」などの関連動画をいくつか集めて、1つの包括した番組コンセプトのもと構成するのが一般的。このため、1つの番組内に複数の「コーナー」を設けるなど企画性の高い構成になる。企業が継続的に「番組」を通じてコンテンツを発信することにより、単発の「動画」では伝えきれないメッセージを伝えることで、既存顧客以外の生活者全体に自社ブランドのあり方(コンセプト)を広めることも可能だ。

図4「動画」と「番組」の企業による活用

顧客との新しい接点を模索する企業の先行事例もある。例えばBEAMSのYouTube公式チャンネル「BEAMSテレビ」では、注目するライフスタイルをBEAMSならでは視点で発信を続けている。社員自らが、アイテムに応じた着こなしやコーディネートを個人の感想も交えて解説している点が特徴だ。単に自社の商品について仕様や価格などを紹介するのではなく、ブランドや商品のコンセプトや製作工程についても興味深く伝えている。

実店舗を持たないEC企業が自社商品を紹介するチャンネルを運営することもある。これは「商品に触れられない」というECの弱点を補うことも可能となる。また、ブランドや企業が自らジャーナリズムの視点で「番組」を運営することで、自社や自社ブランドの認知を高めようと試みているケースも増えてきた。これをブランドジャーナリズムと呼んでいる。

Earned Mediaの視点でマスメディアなど外部メディアに「取材してもらう」のではなく、自社を含めた社会全体や業界に関して第三者の視点から取材し発信していく。これにより、消費者の興味を広く喚起していくのが特徴だ。熱烈な“ファン”や潜在顧客に絞ったコミュニケーションではなく、むしろ、生活者(一般消費者全般)全般に向けて、自社の企業理念やブランドストーリーを分かりやすく伝えることが重要となる。

視点2
「番組」を制作する目的・効果・数値目標

番組として発信する目的は?

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