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デザインの見方

固定観念にとらわれない表現で作品の世界に引き込む

沢田耕一

『責場A,B,C』(1969)

『週刊少年マガジン』(講談社、1970)表紙

『GENKYO 横尾忠則 Ⅱ:Works 原郷から幻境へ、そして現況は?』
(国書刊行会、2021)

横尾忠則さんの作品と出会ったのは、高校1年生の頃。美術の先生が持っていた横尾さんの作品集を、何かのきっかけで見せてもらいました。そのとき大胆な色使いの『責場』という版画作品に目を奪われました。描かれている壁や畳、肌、着物など、固有の色なんて関係なく、とにかく自由。今まで見たことがない表現にとても驚きました。

『責場』は3連の作品なのですが、それらが未完成であることにも気付きました。版を重ねて完成する版画のプロセスそのものを見せた作品なのですが、それは後から知りました。当時はとにかく、途中段階という今まで見たことがない作品の世界に引き込まれ、直感的にかっこいいと思ったのを覚えています。

もともと美術には興味がありましたが、私が知っていたのは、ゴッホやピカソ、マチスのような世界の名画。それらと比べると横尾さんの作品は生っぽかった。高校生の私にとっては、新しいロックを知ったときのような刺激があり、それに反応する自分も、ちょっとイケてるのかもしれないなんて、錯覚した記憶もあります。

その後、横尾さんの作品を追いかけていたら、小学生の頃になんか変でかっこいいなぁと思って見ていた『週刊少年マガジン』の表紙デザインは横尾さんの仕事だと知りました。私は小学生の頃、横尾さんの作品に出会っていたんです。その表紙のことは、よく覚えています。特に印象的だったのが...

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