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メディア研究室訪問

課題を的確に把握『ワクワクする何か』を生み出す力を学ぶ 明治大 奥山雅之ゼミ

明治大学 政治経済学部 奥山雅之ゼミ

メディア研究などを行っている大学のゼミを訪問するこのコーナー。今回は明治大学の奥山雅之ゼミです。

奥山雅之ゼミのメンバー

DATA
設立 2017年
学生数 3年生18人、4年生16人
OG/OBの主な就職先 ディベロッパー、鉄道会社、建設会社、シンクタンク、映画、マスコミ、出版社、メーカー、総合商社、専門商社、金融機関、公務員 など

明治大学政治経済学部では、グローバル化が進む社会で生じる多くの問題に対処できる教養豊かな専門人の育成を目指している。世界的な視野での課題解決能力を身につけるため、国際的なプログラムの展開にも注力。特に、学部が独自に設置する留学プログラムの選択肢は明治大学で最多を誇る。本年4月からは2022年度以降の入学者を対象に、GCD(グローバルキャリア形成)プログラムも立ち上げた。

分析とフィールドワークを経て成果物を

学科の垣根を越えたゼミナール教育も特徴のひとつだ。奥山ゼミでは「産業なくして地域の発展はない」の考えのもと、製造業、農林水産業、観光業、その他サービス業など、地域産業の実態と課題を分析し、産業と地域がともに持続的に発展するための課題と方向性について研究。特に、中小企業を中心とした地方創生の担い手確保、地域産品のグローバル市場へのアプローチなど、地域に密着した産業振興をゼミ活動および研究の中心に置いている。

ゼミではまず地域経済学の基礎を学ぶ。次に、対象地域の特徴や課題について、その地域の所得循環など経済学の手法や歴史、地理の理論をフル活用して分析し、現地での実態調査やフィールドワークへと進む。ここからは、マーケティングやブランディングなど現地の課題に対応した経営学の理論でのアプローチとなる。アウトプットは、各地域の実情とニーズに応じた観光商品の開発、観光ガイドや事例集などの出版物、政策提言、研究論文などだ。

SDGsに関する論文で「優秀賞」を受賞

フィールドワークが特徴の奥山ゼミだが、論文執筆によって理論的思考能力を習得することにも積極的に取り組んでいる。2014年に始まり、国内外から累計600本を超える応募のある「SDGs学生小論文アワード by 住友理工」では、2019年と2021年に合計4本の論文が優秀賞を受賞。

2021年の論文では、人材の活性化を目的とした「他企業へのレンタル移籍制度」、戻ることを前提にベンチャー企業などに転籍する「積極的往復切符制度」、高校の部活動に企業が協力する「企業運営型部活動」などを提案し、応募した3グループすべてが優秀賞を獲得した。「同じゼミナールから3つのグループが受賞するのはこのアワード初だったので、強く印象に残っています」と奥山教授。

また、高齢化のスピードが速い郊外の地域課題に対する立案も行っている。多摩市において、観光名所の代わりに「公園」を巡る「たま公園ロゲイニング」(時間内にチェックポイントを回るスポーツ)の企画では「多摩地域マイクロツーリズムコンテスト」(多摩市、京王観光などが主催)で最優秀賞(2021年度)を受賞している。

(左)ゼミで出版した若者のための別府ガイド・エッセイ(右)「たま公園ロゲイニング」の実施風景。歩道と車道が分離されており、公園が多く安全で住みやすいという多摩市の良さをPRした。

難しいことも「いかに楽しくやれるか」

「やっていることが充実している割に、外部からはゆるいゼミだと思われているかもしれません」と話す奥山教授だが、遊び心を大切に活動することで新しい視点に気づくことができ、大きな成果につながると考えているという。

ゼミでは、地域に応じた「何かを生み出す」ことがゴールとなる。理論だけで終わらせることなく、理論が実践に役立つことを実感し、長い社会人生活においても「学習」に積極的に取り組む姿勢を醸成するのが大きな狙いだ。生み出すためにはイノベーションが重要であり、知識に裏付けられた創造力・構想力が試される。「時には、理論では割り切れない調整や交渉も必要。じっとしているより現場に行ってコミュニケーションをし、クヨクヨするより次に進むことを習慣として身につけてほしいと願っています」。

都庁でのビジネス経験を元に大学へ転身 地元の魅力を引き出す

中小企業のコンサルティングや都庁での企画立案経験を活かし、40代で大学へと転身した奥山教授。「管理職に昇進すれば、持っていた専門家志向から遠ざかってしまう。また、東京だけを見ていてよいのか自問したこともきっかけ」と話す。

「地方が疲弊し、東京ですら世界の各都市と比較して競争力が格段に落ちています。東京の産業経済を見てきた自分が地方の産業も見ていけば、地方にできることや地方にしかできないことを見つけ出せるのではないか。これをライフワークにしようと考えました」。

現在の研究テーマは大きく3つ。「成熟した産業地域の再活性化」「地域産業のグローバル化」「事業承継」だ。

「実務家出身ではありますが、研究業績もしっかり残していくことが重要。都心も地方も教育も研究も両利きでやっていきたい。忙しいながらも充実した毎日です」。

奥山雅之(おくやま・まさゆき)教授
東京国税局、東京都庁、多摩大学経営情報学部を経て、明治大学政治経済学部へ。都庁では東京都商工指導所にて中小企業の診断・指導、調査研究に従事。その後、産業労働局商工施策担当副参事、企画計理課長などを歴任。東京都の中小企業施策の企画・立案に長く携わるとともに、各自治体の施策検討委員会委員などを務める。博士(経済学)。

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