日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

データで読み解く企業ブランディングの未来

周年事業は「3つのシンカ」で企業成長チャンス

Supported by 電通PRコンサルティング

企業の広報戦略・経営戦略をコンサルティングするプロが企業ブランディングのこれからをひも解きます。

今回のポイント
①「周年」は企業やブランドが成長する大きなチャンス
② 原体験を起点にした“周年だからこそ”のアクション
③「社内だけ」「その年だけ」ではもったいない

自社やブランドのPRに「周年」を活用できていますか?周年は、企業やブランドの価値を高める絶好のタイミング。周年に合わせて行う「周年事業」は、企業やブランドのレピュテーション(評判)を向上させ、成長につなげるチャンスです。

一方で、「周年だから何かやらなくちゃ」と、なんとなく周年事業をスタートして、気付けば目立った成果もなく終わってしまうことがあります。今回は、周年事業を成功に導く“3つの視点”を「シンカ」というキーワードで解説します。

図 周年事業で企業価値をあげる、3つの「シンカ」

親密になりたい利害関係者は?

1つ目のシンカは「親化」。周年は、顧客や株主、従業員のみならず、これまで接点が薄かった人など、社内外のステークホルダーとの関係性を見直し、「親密になる」チャンスです。

そうは言っても、どこから取りかかればよいのか分からない⋯⋯。そんなときには、自社とステークホルダーの関係性を一度棚卸しするのがオススメです。ステークホルダーごとに「現状の関係性」と「ありたい関係性」を書き出し、特に今後の企業活動において重視したいステークホルダーを選定します。

さらに、その人たちの背景に「どのような環境、社会課題があるのか」までを把握することで、周年事業として応えていく企画の糸口を見つけやすくなります。また関係性を強化したいステークホルダーを設定することで、周年事業の目標設定も見えてきます。

コロナ禍では社内コミュニケーション減少などの課題から、周年事業を“社内のみ”に注力することもあるでしょう。もちろん社内も大切ですが、周年は社外に対して、企業やブランドとの接点をつくる良いきっかけです。社内×社外の両軸で統合的に取り組むことが、より企業価値を高めることに寄与します。

周年独自の体験で関係性向上

2つ目のシンカは「深化」。周年は言ってみれば「企業が積み重ねてきた資産そのもの」です。これまでの歴史の中で、顧客や従業員の中に、多様な「原体験」が存在します。その原体験を掘り起こし、周年の節目である今の時代にふさわしいアクションとしてアップデートすることで、企業体験を「深める」チャンスです。

周年は企業側の立場だと、特別予算やプロジェクトチームなどが組まれ、いわばお祭りムードになります。一方で、生活者など社外のステークホルダーやメディアからすると「周年自体」に関心はほとんどない状態。周年が世の中で話題になるときには「周年の取り組み」がニュースの主であり、「周年を迎えた事実」は、あくまでも付帯する情報や導入としての扱いがほとんどです。

たとえば、企画を考える際に「企業の持つ原体験」と「未来を見据えた時代性」を掛け合わせてみると、“この周年だからこそ”の企業の新しい体験が生まれます。そうしたアクションの積み重ねが、社内外さまざまなステークホルダーとのエンゲージメント強化につながっていきます。

また、周年が社内にもたらすよい効果として「周年だからやってみよう」と社内承認のハードルが普段よりも低くなることがあげられます。その観点で、周年事業のテーマは社内からのチャレンジがしやすいもの、前例のないことに積極的に取り組むような方針にできると良いでしょう。

さらに、周年事業は1つの施策だけでなく、多様な施策を集約できる「プロジェクト型」の立て付けにしておくことで、社内各部署から自発的な取り組みが生まれやすくなります。

1年だけではもったいない!

最後のシンカは「伸化」です。周年は「その年だけ」「その日だけ」という短期間・単発で考えがちです。しかし、周年を中心に、前後の年も視野に入れながら企画設計することで、中長期にわたって企業価値に影響しうる期間を「伸ばせる」チャンスです。

3カ年で「プレ年」➡「周年本年」➡「アフター年」と捉えた場合、プレ年は主に準備期間。社内プロジェクトチームの編成、従業員ヒアリング、ディスカッションなど、社内コミュニケーションが中心となります。このフェーズでは、周年プロジェクトチームを編成する際に、トップと個別部署をつなぐ“ミドルアップダウン”の役割を持たせることがポイントです。

周年本年は、2つ目の「深化」で解説した、企業やブランド体験を深める施策を社内外に展開します。このフェーズでは、社外に発信した取り組みを随時社内へフィードバックし、効果測定を進めていきます。それにより、本年で成果が大きかった取り組みを、翌年(アフター年)に継続するといった判断を進めていきます。

周年をきっかけとした新たな取り組みが、その後も継続したり、今後の事業化につながったりすることもあります。実は、中長期にわたり企業価値に影響をもたらす大きな可能性を秘めているのが「周年事業」なのです。

関連記事はこちらのサイトでも展開中。
https://note.prx-studio-q.com/
「PRX Studio Q」電通PRコンサルタントのプランニングチームによる公式note

電通PRコンサルティング
プランナー
松尾雄介(まつお・ゆうすけ)

「解決できるならなんでもやってみよう」精神で、イシュー起点のマジメな企画からクスッと笑える企画まで、愛と振り幅のあるプランニングが得意。企業向けPRワークショップも実施している。

企業広報戦略研究所(2013年設立)は、経営や広報の専門家と連携して、企業の広報戦略・体制などについて調査・分析などを行う電通PRコンサルティング内の研究組織。https://www.dentsuprc.co.jp/csi/

CASE

45周年プロジェクト「答えはガシャポンだ」

バンダイが「ガシャポン」のブランドで展開しているカプセルトイ事業は、業界シェアトップとして、自販機と商品を進化させながらビジネスを続け、2022年で45周年を迎えました。しかし、カプセルトイを表す呼び方として「ガチャガチャ」や「ガチャポン」が多く見られるようになり、「ガシャポンの知名度はどれくらいなのか」という素朴な疑問を調査した結果、知名度は驚異の4%に。

「指名買いされるブランドになること」を目標に、周年の2022年は「答えはガシャポンだ」をテーマとし、ガシャポンの持つ3つのワクワク(売場、体験、商品)をチャーミングに伝えるべく、新聞広告や記念日制定、限定イベントなど、毎月1つ以上の企画を実施。生活者の中でも発話が増え、「カプセルトイ=バンダイ=ガシャポン」を知ってもらうきっかけづくりができたのではと感じています。もっと多くの方に「ガシャポン」と呼んでもらえるよう、これからもさまざまな場で発信していきたいと思います。

(左)「これの名前は?」と問いかける新聞広告(右)京王井の頭線渋谷駅改札外に特別な自販機を設置

バンダイ
ベンダー事業部
グローバル
マーケティングチーム
瀬谷朋子氏

データで読み解く企業ブランディングの未来 の記事一覧

周年事業は「3つのシンカ」で企業成長チャンス(この記事です)
LGBTQ+と広報の役割
変わるPRイべント・記者会見 メタバースにも注目
企業ミュージアムとそのPR的資産価値の変化
『伝える』よりも『伝わる』インターナル広報を
グローバルリスクの把握なくして企業の成長なし

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する