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BtoB広報の実践

BtoB広報がより重要に 社会的な関心集める「アジェンダ」設定とは

山田まさる(コムデックス)

市場が成熟し製品やサービスなどでの差別化が難しくなった時代において、企業成長を続けるには、社会的な関心を捉えた「アジェンダ」(議題や課題)を設定し、それに応える企業の存在意義「ソーシャルメッセージ」を発信することが効果的だ。

Q1 なぜ、BtoB企業にも広報活動が必要なのでしょうか

市場が成熟し製品などでの差別化が難しくなったため

前提として、広報活動は、あくまで企業が抱える課題を解決するための「手段」。その手段をどのように使うのかという「戦略」が必須です。そこで、企業が経営課題を抱えているなら経営戦略に、商品の販売課題を解決したいならマーケティング戦略に、人材に困っているのであれば人事戦略に基づいて、広報活動の方向性を定める必要があります。

企業の存在価値を伝える

その上で昨今、BtoB企業の広報がより重要になってきています。社会や市場が成熟した現代、モノの機能やデザイン、サービスなどで単純に差別化を図ることが難しくなってきたからです。戦後から事業を続けている老舗企業などはこれまで、取引先のニーズに対応することで課題を解決して成長を続けてきました。今後もこのようなやり方で圧倒的に差別化ができ、ビジネスが安定して成長するなら広報活動はいらないでしょう。

しかし、同じ価値が他の企業でも提供できる状態にあるならば、課題を解決するための広報活動が必要になります。そこは、BtoBであってもBtoCであっても同じです。大きなマーケットになればなるほど、競合相手が増えますから、広報活動を通じて自社の存在価値を理解してもらえなければ、たちまち価格競争に陥り、提供価値が下がってしまいます。

社会への貢献性打ち出す

またITやAIの進展によって、今まで求められていたものが、まったく要らなくなってしまうことがあります。感染症や戦争などで世の中が激しく変化する昨今はビジネスの基盤が変わる可能性も大きく、消費者や取引先に「うちの会社、うちの製品でなければならない理由」を明確に伝えていかなければ、不要と見なされてしまうかもしれないのです。

そこで重要になるのが「ストーリー価値」の提案です。製品単体の機能ではなく、企業そのものに価値を感じてもらい、自分たちは何の課題をどう解決し世の中にどう貢献しているのか、といった企業の持つストーリーを、広報活動を通じて発信するのです。

しばしば「広報=一般の知名度を上げること」だと思われがちですが、必ずしも広く一般に知られることだけが広報ではありません。消費者と接点のないBtoB企業であっても、優秀な人材を採用したい場合や取引先からの信頼を獲得するため、何よりも社員のモチベーションをあげるためにも広報は有効です。

IRや財務を考える意味でも、潜在的な株主も含めたマーケットに自分たちの価値を伝えていく必要があります。業界の構造と競争だけに目を向けていては、ビジネスが成立しづらくなっている今だからこそ、BtoB企業にも...

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