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大学広報ゼミナール

情報だけではなく『想い』を学生と連携する意義とは

皆藤昌利(大阪公立大学)

「学生と連携・並走する広報活動」の効果や意義を、3編にわたり考察してきました。その最後となる本稿では、「大学の宣伝」を超えて学生たちが受け手に伝えたかった時々の想いを紹介するとともに、広報活動によって学生が得たであろうものについてまとめます。

自大学らしさをありのままに発信

大阪公立大学の前身校のひとつである大阪府立大学(以下、「府大」)で、当時の学生たちが立ち上げた『Michi Take(ミチテイク)』という広報誌があります。企画・編集・取材を行う学生団体「MICHITAKERs(ミチテイカーズ)」は、結成した2013年から2020年頃まで活動。高校生や後輩在学生向けに、府大の魅力を学生視点でまとめた10編の学生広報誌を発行し、またウェブ等で広く発信しました。

媒体名『Michi Take』には、積極的に「Michi(未知)」なるものに挑戦してきた先輩学生として自ら行動し、様々なMichiをtakeすることで自分自身の可能性が「満ちていく」ことの大切さを後輩に伝えたい、という想いが込められています。

MICHITAKERsの学生らと奥野武俊学長(いずれも当時)との企画会議。

MICHITAKERsステートメント。結成時の学生らによってまとめられた。

強みは“真っすぐな想い”

彼らは創刊号で「大学が持つ大きな価値である、様々な知的な出会い、未知(Michi)へのきっかけを、ありのままに学内外に届けたい」と綴りました。広報誌によって届けようとしたことは大学の宣伝ではなく、学び方や生き方でした。入試という選抜制度がある現実の中で、「置かれた場所で咲こうと前を向くこと」、その上で「自ら感じ、動き、人生を自分で描いていくこと」、「大学で自ら学び続けることの意味」の重要性を伝えたかったのだと思います。

また、後輩となる在学生に対しては「4年ないし6年の大学生活はあなただけのもの。胸を張って、自ら積極的に」とエールを送りたかったのでしょう。

彼ら自身も、それぞれにもがき苦しみMICHITAKERsに辿り着いています。だからこそその想いは真っすぐ届きます。その方針に広報担当者はもちろん、当時の学長や広報担当理事は共感し、また熱を帯びながらも自由闊達で、少しおせっかいな姿勢も「うちの大学らしい」と感じました。そのため誌面の最低限のチェックはするものの、原則として自由に「ありのままの大阪府立大学」を発信してもらいました。

また、彼らが広報誌活動と...

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