販売促進の専門メディア

           

「PDCA」が回らない

PDCAを回すその前に。何が最重要指標なのか?を考えよう

國田圭作(嘉悦大学)

PDCAがなぜ回らないのか?を掘り下げていくと、そもそもPDCAとはどのようなものであるべきなのか?という根本が見えてきます。この連載の最終回は、組織が構造的に抱える悩ましい課題について考察します。

イラスト/山崎綾子

ちょっと考えてみてください。そもそも、なぜ企業は成長目標を持つのでしょうか。金利もほぼゼロ、人口増加もない(世界全体でも人口は2064年をピークに減少に転じるそうです)、サステナブルが求められるこれからの社会。でも、おそらく営業会議で前年の数字を超えろと怒られる光景がなくなることはないでしょう。

PDCAは人間の本質

それは組織には生物体と同じ、自己組織化という機能があるからです。組織は限界まで成長し、そこからは新陳代謝で次世代の組織に生まれ変わり、新たな成長を目指します。生命と同様、企業は成長それ自体が目的なのです。成長を止めるということは死に向かうことと同義です。さらに、生物体が生存のためのフィードバック・ループを持っているところも似ています。環境変化をモニタリングし、それに対して自分の状況を制御し、変化させ、適応する、つまり「PDCA」そのものです。

大げさに言えば、「PDCA」は企業に限らず、人間が、いや全ての生命体が、生まれながらに持つ本質的な活動なのです。トヨタのKAIZENに象徴される、「もっと良くしよう」という意識は、上から指示されるものではなく、自ずと心から湧き上がってくる人の内発的な動機です。

では、それにもかかわらず人間社会でときどき「PDCAが回らなくなる」のはなぜなのでしょうか。ここでは大きく三つの根本原因を取り上げます。まず第一の原因はP(計画)における目標設定の水準です。提供価値に対して目標が高すぎると問題です。本来、経営陣は目標に見合った提供価値をつくり込むことに経営資源を投下すべきなのです。それが無理なら目標は下げなくてはなりません。

目標が過大だと、現場に無理が出ます。社員は身を守るために目標を低めに設定し、それをストレッチしようとする経営陣との間に亀裂が生まれます。そもそも設定された目標に対して、社員が心の底から納得していない場合は、結局目標が達成できなかった言い訳を作文することが仕事になってしまいます。なぜその目標なのか、どのように達成可能なのか、を示すことはトップの役割であり、かつ全社的なコンセンサスが必要なのです。それがないと「PDCA」は必然的に回らなくなります。

戦国時代に日本にやってきたイエズス会の宣教師は、本国の本部に毎年、膨大な報告書を提出していました。なかなか布教が進まない、経費が足りない、といった報告が世界中から集まっていたようです。組織が大きくなり本部と現場の距離が拡大すると、本部への報告作業に...

あと60%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

「PDCA」が回らない の記事一覧

PDCAを回すその前に。何が最重要指標なのか?を考えよう(この記事です)
達成目標を『盛りすぎ』て新製品戦略のPDCAが回らない?
そもそも、なぜPDCAサイクルを回すことが難しいのか?
販促会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する