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リスク広報最前線

全容解明前の会見、迅速さと真摯に向かう姿が信頼の維持に

浅見隆行

複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。

問題の経緯

2022年7月2日

KDDIの通信サービスが2日深夜からつながりにくい状況になった。通信網内の設備を定期交換する際に異常が発生。4日15時まで利用者に影響があり、全面復旧宣言をしたのは5日だった。個人の利用者だけでなく、自動車サービスや物流、金融機関、気象観測システムなど、広範に影響が出た。

7月2日深夜から61時間25分にわたって、KDDIが提供する通信サービスで音声通話・データ通信ができないなどの障害が発生。日本全国で最大約3915万回線に影響が出たこともあって、大きな注目を集めました。一連の事象に対してKDDIが行った広報対応は参考になる部分が非常に多かったので、今回は、このケースを題材に検討します。

第一報は午前3時、迅速な対応

通信障害が発生したのは、7月2日午前1時35分でした。これに対し、KDDIが第一報をウェブサイトに掲載したのは午前3時00分。障害が発生してからわずか1時間25分で広報担当者がリリースを作成し、サイトに掲載する段取りまで済ませたことになります。土曜の深夜ですから、通信障害が発生しても、迅速に広報対応することが非常に難しい時間帯です。にもかかわらず、わずかな時間で対応できたことは、広報対応が磨かれている印象を受け、同時に、利用者ファーストという企業姿勢が徹底しているとも感じました。

KDDIはその後も5日16時15分まで、1時間ごとに、「au携帯電話サービスがご利用しづらい状況について」と題して、通信障害の状況を継続して情報提供し続けました。これも利用者ファーストという企業姿勢が徹底している印象を受けました。

通信障害が発生している間は、利用者は「いつになったらつながるんだ」とイライラ感が募っています。そのイライラを解消するために必要な情報を提供し続ければ、一定の利用者は「もうしばらくかかりそうだ。待つか」とイライラを鎮めて、KDDIに対してクレームを入れるなどの行動を思い留まってくれるようになります。

また、3日1時00分には「全国的にデータ通信を中心として徐々に回復してきています。西日本は7:15、東日本は9:30を目標として復旧活動に取り組んでいます。」と復旧の目標時間を掲載し、3日2時00分以降は「03:00時点では全国の15%程度回復見込みです。」「03:00時点では全国の15%程度回復しており、04:00時点では全国の35%程度回復見込みです。」などと、回復の進捗や回復の見込みの程度についても情報を提供するようになりました。

これらの情報を提供したことで、利用者には安堵感、安心感も生まれます。そうなれば、...

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