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実践!プレスリリース道場

「煙の少ない焼き肉グリル」のリリース、ウェブ転載を想定した構成

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出する企業や商品リリースについて、PRコンサルタントの井上岳久が配信元企業に直接取材。背景にある広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを、じっくり分析・解説します。

とかく悪影響が取り沙汰される新型コロナウイルス感染症ですが、家に滞在する時間が増えたことにより、ヒットに結びついた商品も多くあります。今回紹介する山善の「煙の少ない焼き肉グリル」もそのひとつ。

現在第3弾まで出ているシリーズの第1弾を発売したのは2020年7月。同社の商品開発担当(MD)が、家で焼き肉をする際に煙で服や髪にニオイがつくのを抑えられないかと考え、開発を始めた頃にコロナ禍へ突入しました。煙やニオイは、プレートに残った油などが高温で燃焼することが原因です。そこでプレート裏面を独自の「Xカット構造」にして効率的に油を落とし、70%(自社ホットプレートとの比較)もの減煙に成功したのです。

続く第2弾は2021年4月。ホットプレートを大型化し、網の隣に設けたマルチスペースでは、器に入れたチーズを溶かしてチーズフォンデュができるようにするなど、使い方がお洒落かつ多様化しました。

第1~2弾はメディアの反響もかなりよく、年間5万台売れればヒット商品といわれる中で累計11万台を第3弾発売前に販売しています。

そして2021年9月に発売した第3弾が今回取り上げる商品です。プレート側面に吸煙ファンを内蔵することで減煙率が94%まで上昇。人気のたこ焼きプレートつきで、各パーツを取り外して水洗いできるようになりました。

気になったのは、こんなに短期スパンで次々に上位機種をリリースするものなのかということ。「現在は各社がECサイトを持ち、消費者も比較しながら購入するので、上位機種を出すサイクルはどんどん短くなっています。当社は自社工場を持たないファブレスの強みを活かし、調理家電だけで年間30種類を開発しています」と経営企画部広報・IR室リーダーの本井啓貴さんは競争の厳しさを説明します。

同社は同じカテゴリでも、5000円台、7000円台、2万円台と価格帯を分け、需要の違いを明確にしています。

基本を外さない構成

では、第3弾のリリースを見てみましょう。(ポイント1)まず、「94%の煙をカット」という非常にインパクトのある数字をタイトルに入れるのはリリースの常套手段です。この数字で、瞬間的に強い関心を抱かせることに成功しています。

(ポイント2)商品ロゴと写真を組み合わせたメインビジュアルが目を引きます。「XGRILL PREMIUM」は商品の愛称で、第1弾リリースには焼肉写真だけを入れるつもりが、「XGRILL」のロゴにインパクトがあり、「Xカット構造」という商品特長も表していることから、メインビジュアルと組み合わせることを決定。第3弾まで踏襲しています。

「煙の少ない焼き肉グリル」第3弾リリース

この連載でも指摘してきたように、家電は型番=商品名で、シリーズ名や愛称がない製品も多いですが、付けた方が確実に消費者には浸透します。この商品も、第3弾リリース時はSNSで「XGRILLシリーズの新作が出る!」と話題になりました。

(ポイント3)2~3ページ目は、商品特長を3項目にまとめています。それぞれの写真が非常に分かりやすいのが特徴です。同社のMDは東京に、広報は大阪本社にあります。新商品の情報は発売1~2カ月前に広報に伝わり、まずメールで打ち出し方を相談。そして販促担当がパンフレット用などに準備した写真をもとにリリースを作成しますが、「もっとこういう写真が欲しい」とMDに希望を出し、広報用に撮影してもらうこともあるそうです。

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