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企業の資産を活かし未来の指針を打ち出す「周年」企画のつくり方

「昨日まで」から「明日」を見つめる100周年の旭化成

旭化成「Tomorrowʼs Talk」

2022年5月に創業100周年を迎えた旭化成。それを機に、新たなテレビCMシリーズ「Tomorrow’s Talk」の放映をスタートした。「イヒ!」や「昨日まで世界になかったものを。」などおなじみの企業広告を展開してきた旭化成は、100周年で何を語ろうと試みるのか。

テレビCMシリーズ「Tomorrow’s Talk」の「交差点にて」篇と「路地裏にて」篇。

「Tomorrow’s Talk」に登場するキャラクターたち。(左から)スカッとした性格のごみ袋「バッグ」、路地裏に住む街の年長者「ボックス」、うわさ好きの鳥「トーキングバード」、赤・青・黄のおしゃべり好きな仲良し3人組「シグナルズ」。

社内でパーパスを議論することから始めた

「Tomorrow’s Talk」シリーズはクレイアニメーションの手法を用いており、「交差点にて」篇では信号機が、「路地裏にて」篇ではごみ袋とごみ箱が主人公。彼らの視点から環境問題を見つめ、明るい未来をユーモラスに示唆する内容になっている。

旭化成のCMといえば、同社の社員をイメージしたキャラクター「イヒ!君」が登場するシリーズ(1997〜2006年)や、世界中の社会問題や環境問題を浮き彫りにするとともに同社が提供するソリューションを紹介する「昨日まで世界になかったものを。」シリーズ(2007〜2022年)などが広く知られている。その流れの中で、今回の100周年を機としたCMはどのようにしてつくられていったのだろうか。

経緯について、旭化成の広報部長 楠神輝美さんは次のように振り返る。「旭化成の『化』の字を用いた『イヒ!』は世間に大きなインパクトを残し、社名の認知拡大につながりました。その次に当社が高い技術力をもってグローバルで社会課題を解決する事業を展開していることを伝える『昨日まで〜』シリーズを展開。こちらも10年以上続いたところで、今後どのようなコミュニケーションをすべきか考え始めたんです」。

2017年からは、同社の社会貢献活動を伝える「君たちが未来だ。」シリーズも放映。だが2020年の新型コロナの感染拡大を契機に、2年後の100周年を見据え、改めて経営課題とコミュニケーションの方向性を考えることになった。

「そこから海外拠点の広報担当を含めた広報部のメンバー約20人と、当社の広告を長年担当してきた電通の皆さんも入り、まずパーパスを議論する場を複数回設けました。これは外部に向けたものではなく、我々が内部で理解を深め認識を共有するためのものです。コロナ禍や環境負荷への対応が世界的な課題となる社会で、前向きに次の未来をつくっていくメッセージとはどんなものか。旭化成は創業以来何を大事にしてきて、これから旭化成が向き合うべき社会課題は何なのか、というディスカッションを繰り返し、100周年とそれ以降の広告コミュニケーションの方向性を探っていきました」(楠神さん)。

モノの視点から課題を語る

ディスカッションの結果、旭化成のパーパスとは「多様な価値観を認め合い、新しい当たり前をつくる」「ユーモアも大切に、前向きに未来をつくる」ことという共通認識に至った。「BtoBの企業でパーパスを表現するとなると、どうしてもきれいにまとまった映像とコピーになってしまいがち。オリエンではこのパーパスの部分をクリエイティブに伝えつつも、表現は自由に新しいものを考えてほしい、とバトンを渡しました」と、電通のアカウントリード 中澤達彦さん。ここからクリエーティブディレクター 木村隆太さん(電通 第3CRプランニング局)らが具体的な内容を考えていった。

「旭化成の歴代のCMは、僕自身も見て育ってきたものでした。特に『昨日まで〜』は広告業界のお手本のようなキャンペーン。今回のお話を聞き、最初は正直、変えなくて...

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「昨日まで」から「明日」を見つめる100周年の旭化成(この記事です)
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