常識と考えられていることについて、実はそうではないと提言していく本連載。今回のテーマは「公開されている言説」。巷に溢れかえるノウハウやTipsを無批判に信じると陥る罠について著者が解説する。
常識12 公開されている言説は正しい
▷すべての言説は批判されるもの
▷個別解が必要で、制約を無視してはいけない
▷言説の背景にある仮定や考え方を探ろう
当たり前に受け入れられている常識を、一歩下がって疑うことで本質を炙り出す連載「その常識を疑おう」、最終回となる第12回目のテーマは「公開されている言説は正しい?」です。
本連載も含め、マーケティングや販促活動に関するノウハウやTipsが巷には溢れかえっています。実務家が自身の経験を基に考察していることもあれば、研究者が数多くの事例を科学的に考察しているものもあるでしょう。マーケティング界隈には勉強熱心な方も多いのか、他の職種と比べるとセミナーやイベント、書籍の数も段違いに多いように見受けられます。
書籍や雑誌記事、学術論文や講演内容、ツイートやブログなどといった様々な形式で展開されている言説ですが、「著名な学者が言っているから」とか「○○という有名企業で採り入れられている考え方だから」とか「出版されているのだから」とか「実際に○○社で結果が出ているのだから」など、信じられる理由に満ちていることも珍しくありません。
はたして、これら言説をそのまま信頼しても良いものなのでしょうか?実際に連載をしている側からこういった問題提起は不誠実な印象も受けるかもしれませんが、疑うべき常識として最後に取り上げさせていただこうと思います。
すべての言説は批判される
そもそも学術論文であれ書籍であれ、有名人の講演であれ、その言説をそのまま受け入れることは避けるべきですし、危険です。その大きな理由は、すべての言説は批判されうるからです。全員が同意できる内容は過度に一般化されていて、新たな知見をもたらさないとも言えます。マーケティングの大家コトラーの提唱するSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)に対しても、その考え方は違うのではないかという批判をする学者がいます。
並列させるのはややおこがましいのですが、本連載に対しても批判的な議論は当然存在します。実は脱稿前に必ずチームや社外の方々からの批判をいただいて、議論の補強をしたり修正したりしています。
あたかも絶対の真実のように語られている言説も、見方を変えると批判の対象になるわけですから、絶対的な信頼を置く理由にはなりません。
必要なのは、個別解
マーケティングには...