衰弱する時代劇リテラシーを逆手に ギャップが面白さのポイント
近代日本の娯楽の流れの中に、時代劇や歴史ドラマというジャンルは確固たる立ち位置を占めてきた。歌舞伎・文楽等の伝統芸能はもちろんのこと、小説、映画、ドラマ等の新しいメディアにおいてもその流れは受けつがれている。
しかし一方で、近年は人々の娯楽への嗜好が古典的なもの、歴史的なものから離れてきたのも確かである。テレビドラマで考えてみれば、かつては民放系列局で人気の時代劇がいくつも放送されていたはずなのに、現在の地上波ではほぼ皆無といってよい。かろうじてNHKの大河ドラマが時代劇の牙城を守っている感がある。
こうなってくると、視聴者の“時代劇リテラシー”のようなものも大いに衰弱してしまう。時代劇には独特の所作や言葉遣いがあって、それは史実そのものではなく、時代劇の伝統の中で培われてきたものである。子供時代にテレビの時代劇の洗礼を受けて、チャンバラごっこや忍者ごっこで遊んできた私の世代であれば、少々難しいサムライ言葉も難なく理解できるのだが、今の若い人たちには、定型化された語句を除いて、時代劇のセリフはなじみのない言葉になりつつあるのだろう。
ここでは時代劇の枠組みを借りたCMを3つ取り上げるが、扮装やセットが現代風にアレンジされていたり、そもそも言葉遣いに時代劇の言語が...
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