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国語学の視点

日本語の関節をはずす「カップヌードル」のCM

金水 敏氏(大阪大学)

モーラからシラブルへ つい気になる、リズムと響き

最近の日清食品「カップヌードル」のCMは、ストリートダンスやグラフィティアート風のアニメを組み合わせた、Hip Hop調とでもいうスタイルで目を引いている。カップヌードルという商品の持つ、良い意味でチープでカジュアル、かつクオリティが高いというイメージにマッチしたCMであるように思われる。そこで使われる音楽も、ラップミュージックが効果的に取り入れられている。

一般にラップミュージックが日本語化される際、もともとの英語のリズムを日本語に当てはめた結果、日本語が本来持っていたリズムが意図的に崩されて、今までにない新鮮なリズムと響きが日本語にもたらされる。その新しいリズムとは、モーラ(拍)中心からシラブル(音節)中心への変更、そして急速な加速・減速等である。

やや詳しく言うと、例えば「カ|ッ|プ|ヌ|ー|ド|ル」という単語は、縦線で区切られた7つのモーラから構成されており、かつこれらのモーラは、「ッ」(促音)「ー」(長音)も含めて、等時的(均等な時間)に発音される。しかし英語では「Cup|Noo|dle」という3つのシラブルで構成され、かつそれぞれのシラブルの長さは微妙に違っている。

具体例を示そう。2021年9月から放送されている「辛麺ダンス 篇」では、ロボットダンスの名手...

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