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社会学の視点

YOASOBIにみるネット空間のナラティブと共創

遠藤 薫氏(学習院大学)

「よみ人知らず」の物語が 誰でもない人のうたを生み出す

音楽がいいとドラマや映画は心に刺さる。ドラマや映画がいいと音楽が心にしみる。たとえば、LiSAの「炎」はもとより、miletの「inside you」とか、Uruの「Love Song」とか、ミスチルの「HANABI」なんかは、ドラマの余韻に音楽が重なって、鳥肌が立つように心が震えた。音楽に物語のエッセンスが凝縮され、物語が音楽の向こう側にあるものを具体的に表現する。相乗効果である。でも、それだけだろうか?

第59回「宣伝会議賞」のイメージキャラクターは、「小説を音楽にする」プロジェクトから誕生した音楽ユニットYOASOBIである。デビュー曲「夜に駆ける」は、「monogatary.com」に投稿された小説『タナトスの誘惑』を原作としている。歌い出しから静かなのに強い印象で迫ってくる。

「小説を音楽にする」というコンセプトは、ドラマや映画の主題歌に似ている面と違う面がある。物語空間と音楽空間が共振することで感動を深くするという意味では、両者はほぼ共通する。YOASOBIのうたは小説の主題歌といってもいい。

一方、ドラマや映画はプロたちによって多くの人に受け容れられるよう丹念に作り込まれた「作品」であるのに対して、小説サイトに投稿されてくる物語は...

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