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企業倫理から考える広報

共有できる価値まで遡る─ 多様性の時代のオリンピック広報

杉本俊介(慶應義塾大学)

社会からの信用が問われ、ビジネスに倫理が必要な時代。何らかの葛藤に直面した時、どう筋道を立てていけばいいのか、組織を取り巻く事象から考えます。

私たちは多様な価値を認め合う時代を生きています。価値観は色々あってよい。そう考える人は多いのではないでしょうか。ですが、価値観は色々あってよいというのも一つの価値観。価値観は色々あってはだめ、という価値観と対立し、それを排除してしまいます。価値観は色々あってよいという主張を押し通すことは案外難しかったりします。これは屁理屈じみていますが、多様性の時代において価値観の対立は避けがたいものです。

五輪開催をめぐる対立

今回の東京オリンピックをめぐっても価値観の対立が生じました。一方では新型コロナウイルスの感染拡大のなかでオリンピックを開催すべきでないという意見があります。他方では家で試合の様子を視聴するかぎりオリンピックは感染拡大に影響しないはずだから開催してもよいという意見もあります。

スポンサー企業の判断も難しいところです。「組織委が観客への酒類販売を容認で調整」と報じられた当初、アサヒビールは批判を集めました。広報担当者が「正式に発表されていないのでコメントする立場にない」と述べたところ「アサヒはもう買わない」と火に油を注ぐことに。結局、販売は見送られましたが、感染拡大を恐れる人たちの気持ちを優先し、正式発表に先駆けて「酒類の提供は感染拡大につながる可能性が高いから今回は辞退します」と...

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